ドクターフェイガー

ドクターフェイガー：短距離の王者、そして伝説の種牡馬

1964年4月6日、フロリダ州のタータンファームズで生まれたドクターフェイガーは、アメリカ競馬史に燦然と輝く名馬です。その名は、彼の誕生にまつわる逸話に由来します。彼のオーナーであるジョン・A・ネルードの命を救った神経外科医、チャールズ・フェイガー博士への感謝の気持ちから名付けられました。母アスピディストラは2勝しか挙げられませんでしたが、ステークス競走勝ち馬を4頭も輩出した名牝であり、アメリカ競馬殿堂入りを果たしたタウィーもその兄弟姉妹に含まれます。

驚異のデビューと華麗なる競走馬時代

1966年7月15日、アケダクト競馬場でデビューしたドクターフェイガーは、その潜在能力を強烈に印象付けました。馬なりのまま圧倒的なスピードで走り抜け、7馬身差で圧勝。続くレースでも、8馬身差、12馬身差と、桁外れの着差で勝利を重ねます。2歳時は無敗の4連勝を飾り、将来を嘱望されました。しかし、初の1マイル戦となるシャンペンステークスでは2着に敗れ、休養に入りました。

3歳になると、後の二冠馬ダマスカスを破るなど、その強さをますます発揮します。距離の不安からクラシック路線を回避し、スプリント路線を選択。ウィザーズステークスでは6馬身差で勝利を収めました。しかし、ジャージーダービーでは降着というアクシデントに見舞われます。その後、アーリントンクラシックステークスでは不良馬場をものともせず、10馬身差という圧倒的な強さで勝利し、勢いを盛り返しました。

ウッドワードステークス：世紀の対決

ドクターフェイガーの競走馬生活における最大の山場が、ウッドワードステークスでした。このレースには、1967年年度代表馬ダマスカス、1966年年度代表馬バックパサーという、当時の最強馬たちが集結していました。両陣営は、ドクターフェイガー対策としてペースメーカーを投入。レースは、ドクターフェイガーとペースメーカーによる激しい先頭争いとなりました。しかし、前半の消耗が響き、直線でダマスカスに捕まり、10馬身差で敗れました。それでも、4着馬には13馬身差をつける圧倒的な強さを見せつけました。

4歳時：最強の称号

4歳時、膝や足首の不安を抱えながら、130ポンド以上の斤量を背負いながらも、8戦7勝という驚異的な成績を残しました。この年の唯一の敗戦は、再びダマスカスとの対戦でした。この活躍により、1968年の年度代表馬、最優秀古馬、最優秀スプリンター、最優秀芝牡馬の4部門を同時受賞。アメリカ競馬史上唯一の快挙となりました。

世界記録：驚異のタイム

1968年8月24日、ワシントンパークハンデキャップで、ドクターフェイガーは後続に10馬身差をつけ、1分32秒20という驚異的なタイムを記録。これは現在も世界記録として残っています。引退レースとなったヴォスバーグハンデキャップでも、1分20秒20という記録を残しました。これらは、それぞれ134ポンド、139ポンドという重い斤量を背負って達成されたものでした。

種牡馬として、そして伝説へ

22戦18勝という輝かしい戦績を残したドクターフェイガーは、引退後、種牡馬として活躍しました。1971年にはリーディングサイアーに輝きましたが、1976年8月5日、腸捻転のため若くして亡くなりました。1971年にはアメリカ競馬殿堂入りを果たし、ブラッド・ホース誌による20世紀のアメリカ名馬100選では6位にランクイン。その名声は、現在も色褪せることがありません。数々の名馬を輩出し、その血統は現代競馬にも大きな影響を与え続けています。 彼の伝説は、これからも語り継がれていくことでしょう。

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