ドトールコーヒーショップ

「ドトールコーヒーショップ」（DOUTOR COFFEE SHOP）は、株式会社ドトールコーヒーが日本国内で展開する、セルフサービス方式のコーヒーショップチェーンです。一般的に「ドトール」の略称で親しまれており、業界内では「DCS」とも呼ばれます。

概要と店舗展開

提供するのは、コーヒーをはじめ、サンドイッチやケーキといった軽食類です。その歴史は1980年（昭和55年）に始まり、東京都の原宿駅前に位置する表参道に第1号店がオープンしました。これは日本におけるセルフ式コーヒーショップの先駆け的存在と言われています。創業当初はヨーロッパに見られるような立ち飲みスタイルが採用されていましたが、現在では全ての店舗に座席が設けられ、ゆったりと過ごせる空間が提供されています。各店舗は気取らないカジュアルな雰囲気を大切にしており、「すべての今日を、支えていく。」というキャッチコピーを掲げています。

店舗網は全国に広がり、2015年10月には島根県への初出店をもって、タリーズコーヒーやスターバックスコーヒーに続いて全都道府県への出店を達成しました。しかし、2021年5月に滋賀県内の店舗が閉店したため、現在のところ滋賀県は未出店となっています。

多様な場所への出店も特徴の一つです。石油元売り大手のエクソンモービル（現在のENEOS）との提携により、幹線道路沿いのセルフ式ガソリンスタンドに併設される店舗が増加しました。また、官公庁が集中する東京都千代田区霞が関の日本郵政本社や合同庁舎内、郊外の大型ショッピングモール内フードコート、さらには大型総合病院内にも店舗を構えています。かつては大都市圏を中心に出店していましたが、1994年に青森県のフランチャイジーが八戸市での出店を成功させたことをきっかけに、地方都市への展開も進みました。特に青森県では根強い人気を保っており、2023年10月時点で12店舗が営業しています。

店舗運営においては、業務効率向上のため店員の等級制度が細分化されています。最上位のP.A.MANAGERから始まり、P.A.LEADER、2級パートナー、1級パートナー、そして初級パートナーという段階が設けられています。また、一部の店舗ではフレッツスポットやdocomo Wi-Fiといった公衆無線LANサービスも提供されています。

企業理念と商品へのこだわり

ドトールでは、「おいしいコーヒーと活力の提供」「サービスの徹底」「魅力的な店づくりの追求」「新鮮なコーヒー豆の提供とフレンドリーな売店づくり」を常に実践するための行動指針として「DCSの誓い（繁栄の唱和）」を掲げています。

メニューの中心は、ブレンドコーヒー、アメリカンコーヒー、アイスコーヒーといったドリップコーヒーです。これらに加え、カフェラテ、カプチーノ、エスプレッソなどのエスプレッソ系ドリンク、豆乳ラテ、ココア、ロイヤルミルクティーといったバラエティ豊かなドリンクを提供しています。ドリップコーヒーの抽出には、豆の蒸らし工程を重視した独自のコーヒーメーカーが使用されています。フードメニューでは、ミラノサンド、ホットドッグ、トースト、カルツォーネなどが定番です。ミラノサンドはドリンクとのセットで割引が適用されます。ケーキ類も充実しており、特にミルクレープが看板商品として知られています。これらのケーキは関連会社によって製造されていますが、パティシエが一つ一つ手作りしているのが特徴です。その他、一部店舗を除き、サンドイッチやデニッシュ、焼き菓子なども取り扱っています。

コーヒー豆の販売と鮮度管理

店頭ではコーヒー豆の販売も行っています。量り売りではなく、200gのパック詰めされた豆をその場で挽いて提供する方式が採られており、購入後の別日に挽いてもらうことも可能です。ドトールが特にこだわっているのが焙煎方法です。効率面では熱風焙煎が主流ですが、同店は豆本来のコクと香りを最大限に引き出すために、創業以来の直火焙煎を採用しています。この直火焙煎機も独自に開発したものです。

新鮮なコーヒー豆を提供するために、「フレッシュローテーション」という独自のシステムを導入しています。工場では作り置きをしない「完全受注生産システム」を採用し、店舗には主力となる「マイルドブレンド」「イタリアンエスプレッソ」「アイスコーヒー」の3種類の豆を、売れ残りがあっても週3回新しいものに入れ替えることで、常に新鮮な豆が並ぶようにしています。ドトールでは、より美味しく楽しめる期間を製造から1ヶ月と定めており（賞味期限は6ヶ月）、主力の3種以外の豆も製造から1ヶ月を過ぎたものは販売しません。これらの古い豆は店舗の飲食部門で使用されるため、無駄なく消費され、販売棚には常に新鮮な豆が供給される仕組みになっています。

提供されるコーヒー豆は、ローストの浅い順からミディアムロースト、ハイロースト、シティロースト、フルシティロースト、フレンチロースト、イタリアンロースト、そして炭火珈琲と多岐にわたります。主力の「マイルドブレンド」は、店内で提供されるブレンドコーヒーやアメリカンコーヒーにも使用される看板商品です。最高級品としてブルーマウンテンNo.1があり、これは唯一缶詰で販売されています。

価格と顧客サービス

主力商品のブレンドコーヒーSサイズとアイスコーヒーSサイズの価格は、創業時の150円から段階的に改定され、2024年12月12日からは280円となっています。

ポイントサービスも充実しており、独自の電子マネー機能付きポイントカード「ドトールバリューカード」を発行しています。このカードはチャージ金額に応じたポイントが付与され、年間の利用額に応じて会員ランクが上がり、より高いポイント還元率が適用されます。また、共通ポイントサービスとして、Tポイント（現在のVポイント）、dポイント、Ponta、WAON POINTが利用可能です。ただし、TポイントはモバイルTカードのみ、WAON POINTはプラスチックカードが必要など、一部利用条件が異なります。

顧客への感謝として、毎月最終週の金曜日と土曜日には「感謝デー」が開催され、コーヒー豆をはじめとする売店商品が10%オフとなります。

ブランド戦略とプロモーション

2010年9月からは、コーヒー豆のパッケージやテイクアウトカップなど、多くのアイテムのデザインを順次変更し、よりシンプルで洗練されたイメージへの刷新を図りました。これにより、ブランドの「若返り」を推進しました。

過去には様々なプロモーションも展開しており、ロシアの人気キャラクター「チェブラーシカ」とのコラボレーションキャンペーンでは、白いチェブラーシカをデザインしたグッズの販売やプレゼントが行われました。また、「DOUTOR It's My Time」キャンペーンでは、フリーペーパーの発行や店内BGMとの連携など、著名人を起用したタイアップ企画も実施され、顧客とのエンゲージメント強化に努めています。

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