ドナルド・ジョハノス

ドナルド・ジョージ・ジョハノス（Donald George Johanos, 1928年2月10日 - 2007年5月29日）は、アメリカ合衆国の著名な指揮者です。ダラス交響楽団およびホノルル交響楽団（現在のハワイ交響楽団）で音楽監督の要職を務め、特に同時代の音楽作品の紹介と普及に尽力したことで知られています。氏の姓は、資料によってはドナルド・ヨハノスと表記されることもあります。

アイオワ州シーダーラピッズにて生を受けたジョハノスは、初期の音楽教育をイーストマン音楽学校で受けました。ここではヴァイオリン、音楽理論、そして指揮法を専門的に修めました。卒業後、ロチェスター・フィルハーモニー管弦楽団にヴァイオリン奏者として約5年間在籍し、オーケストラの現場を経験しました。この間、同楽団の音楽監督であったエーリヒ・ラインスドルフに師事し、指揮者としての道を本格的に歩み始めました。

1962年、ジョハノスはゲオルク・ショルティの後任として、ダラス交響楽団の音楽監督に就任しました。この任期中、彼は楽団にとって初となるアフリカ系アメリカ人の指揮者、ポール・フリーマンを指揮者陣に加えるなど、意欲的な人材登用を行いました。これは、若手や多様な背景を持つ音楽家を積極的に発掘し、音楽界に新しい風を吹き込もうとする彼の姿勢を示すものでしたが、こうした先進的な試みは、残念ながら当時の理事会や楽団員の一部から反発を受ける一因ともなりました。度重なる組織内部との軋轢もあり、ジョハノスは1970年にダラス交響楽団の音楽監督を辞任することとなります。同年からは、ピッツバーグ交響楽団に移り、准指揮者として活動を続けました。

1979年、ジョハノスはハワイのホノルル交響楽団の音楽監督に就任しました。この地でも彼は理事会との関係構築に苦慮しましたが、自身の音楽的信念、特に現代音楽の擁護と紹介には揺るぎない情熱を傾けました。保守的な傾向も存在したオーケストラのレパートリーに、積極的に現代作品を取り入れ、聴衆に新たな音楽体験を提供しようと努めました。こうした「現代音楽の冒険的プログラム」と評される彼の活動は高く評価され、1991年には権威あるASCAP（米国作曲家作詞家出版者協会）より表彰を受けています。ジョハノスは1994年までの15年間にわたりホノルル交響楽団を率い、その職を勇退しました。

1997年に指揮者としてのキャリアから完全に身を引き、フロリダ州ネイプルズに移り住みました。静かな引退生活を送った後、2007年5月29日、79歳でその生涯を閉じたのです。

ドナルド・ジョージ・ジョハノスは、主要なアメリカのオーケストラで指揮棒を振るい、特に現代音楽への深い理解と普及への貢献によって記憶されています。組織との摩擦を経験しながらも、才能の登用や新しいプログラムへの挑戦を続けた彼の姿勢は、後進の音楽家やオーケストラ界に少なからぬ影響を与えたと言えるでしょう。

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