ハワイ交響楽団

ハワイ交響楽団（Hawai`i Symphony Orchestra）

概要

ハワイ交響楽団は、アメリカ合衆国ハワイ州ホノルルを拠点とする主要なオーケストラです。1900年にホノルル交響楽団（Honolulu Symphony Orchestra）として設立され、アメリカ合衆国のロッキー山脈以西の地域においては、サンフランシスコ交響楽団に次いで2番目に長い歴史を持つオーケストラとして知られています。設立から1世紀以上にわたり、ハワイの文化・芸術振興に貢献してきました。現在は、ホノルル市内にあるニール・エス・ブレイズデル・センターのコンサートホールを主要な活動拠点としています。

歴史的変遷と試練

オーケストラは設立当初、ホノルルのパンチボウル地区の斜面に位置するクラブハウスで活動を開始しました。その長い歴史において、二度の世界大戦、世界恐慌、度重なる金融危機、そして音楽的・文化的な流行の変化といった様々な時代の試練に立ち向かい、ハワイにおけるクラシック音楽文化の中心的存在として歩み続けてきました。

しかし、2000年代後半には深刻な経営難に直面します。資金繰りが悪化し、2009年10月30日、ホノルル交響楽団の理事会は、活動を継続するための法的整理として、連邦倒産法第11章（日本の民事再生法に類似）の適用を申請することを決定しました。この事態を受け、2009年11月6日には、そのシーズンの残り全てのコンサートの中止が発表されました。当時のオーケストラ協会の発表によれば、100万ドルに上る負債を抱えており、11月以降の運営を支える資金が枯渇していた状況でした。

経営再建を目指したものの、最終的には数百万ドル規模の赤字解消は叶いませんでした。2010年、ホノルル交響楽団は、連邦倒産法第7章（日本の破産法に類似）に基づき、清算・解散へと至り、110年にわたる歴史に一旦幕が下ろされることとなりました。経営破綻前には、年間経費の削減や公演数の縮小など、運営の効率化に向けた計画が検討されていましたが、組織が清算されたため、これらの計画が直接引き継がれることはありませんでした。

新たな船出「ハワイ交響楽団」として

オーケストラの解散は、ハワイの音楽界にとって大きな損失でしたが、その灯は完全に消えることはありませんでした。2011年、ホノルルの実業家グループが中心となり、オーケストラの復活に向けた取り組みが始動しました。このグループは「交響楽団調査委員会」を設立し、かつてのホノルル交響楽団の資産を買い取り、演奏家たちとの新たな契約交渉を進めました。この努力が実を結び、オーケストラは「ハワイ交響楽団」と名称を改め、新たな組織として再出発を果たしました。2011年の秋には、新しいシーズンが無事開幕を迎え、再び活動を再開することができました。復活後の体制では、著名な指揮者であるジョアン・ファレッタが芸術顧問に就任し、組織の芸術的な方向性を担うことになりました。また、シンシナティ交響楽団の元監督であったスティーブン・モンダー氏が理事長を務めるなど、経験豊富なリーダーシップのもと、運営体制が再構築されました。復活後の運営においても、持続可能な形での活動を目指し、効率的な運営が重視されています。

組織と活動

ハワイ交響楽団の歴史には、多くの優れた音楽家たちが名を連ねています。過去の音楽監督には、フリッツ・ハート（1937年-1949年）、ジョージ・バラティ（1950年-1967年）、ロバート・ラ・マルキナ、ドナルド・ジョハノス（1979年-1994年）らがおり、それぞれの時代でオーケストラの芸術水準向上に貢献しました。経営破綻前後の時期には、サミュエル・ウォン（1996年-2004年）やアンドレアス・デルフス（2007年8月-、首席指揮者）が指揮台に立ち、オーケストラを率いました。特にアンドレアス・デルフスは「ハレクラニ名曲シリーズ」と題された定期公演において、シーズンごとに7回のコンサートを指揮し、クラシック音楽の主要レパートリーを紹介しました。復活後、ジョアン・ファレッタが芸術顧問としてオーケストラを支え、現在（2023年以降）はデーン・ラムが音楽監督を務めています。コンサートマスターにはイグナス・ジャンが就任し、演奏面での要を担っています。

ハワイ交響楽団は、クラシック音楽の演奏に加え、より幅広い聴衆に向けた多様なプログラムも展開しています。2014年には、人気シリーズ「musicthatPOPS」を開始しました。このシリーズでは、ブロードウェイミュージカルの楽曲、ディズニー映画の音楽をオーケストラ演奏で楽しむ「ディズニー・イン・コンサート」、サーカスとオーケストラのコラボレーションである「シルク・ドゥ・ラ・シンフォニー」、人気ゲーム音楽を扱う「ゼルダ・イン・コンサート」など、様々なジャンルのエンターテイメントとオーケストラの融合を図り、新たなファン層の開拓に成功しています。

まとめ

一度は解散の危機を乗り越え、ハワイ交響楽団として再出発したこのオーケストラは、ハワイにおけるクラシック音楽文化の灯を守り続けています。歴史に培われた演奏力と、革新的なプログラムへの挑戦を両立させながら、ホノルルを拠点に、地域社会に質の高い音楽を提供するための活動を続けています。

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