ドルビーTrueHD

ドルビーTrueHDとは

ドルビーTrueHDは、ドルビーラボラトリーズが開発した可逆圧縮の音声コーデックです。主にHD DVDやBlu-ray Discといった次世代光ディスク規格での利用を想定して開発されました。このコーデックは、オーディオ信号を数学的に圧縮する際にMeridian Lossless Packing（MLP）という技術を基盤としています。MLPは以前のDVDオーディオでも使用されていましたが、ドルビーTrueHDではさらに高度な処理を可能にしています。

技術的特徴

ドルビーTrueHDの最大の特徴は、その高いオーディオ品質です。最大14の独立した音声チャンネルをサポートし、非常に立体的な音響体験を提供できます。また、最大24bitの量子化ビット数と192kHzのサンプリング周波数をサポートしており、原音に限りなく近い高品質なサウンド再生が可能です。

ドルビーTrueHDのビットストリームには、音声データだけでなくメタデータも含まれています。メタデータには、音量正規化やダイナミックレンジ圧縮などの情報が含まれており、再生環境に合わせて最適な音質で再生できます。このメタデータは、音声データ自体とは別に扱われるため、より柔軟な制御が可能です。

競合技術としては、DTS-HDマスターオーディオがあります。どちらも可逆圧縮方式を採用しており、高音質再生が可能です。

第3世代光ディスク規格におけるドルビーTrueHD

HD DVDでは、ドルビーTrueHDは必須の音声コーデックとして採用され、HD DVDプレーヤーでは2.0chステレオのドルビーTrueHDのデコードが義務付けられていました。ただし、多くのプレーヤーでは5.1chサラウンドにも対応していました。また、ドルビーTrueHDのみの音声トラックを収録することも可能です。ドルビーTrueHDの再生には、再生機器と視聴機器をHDMIケーブルで接続する必要があります。S/PDIF|S_PDIF接続では、ドルビーデジタルに劣化してしまいます。

一方、Blu-ray DiscではドルビーTrueHDはオプション扱いです。Blu-rayプレーヤーで再生が必須なコーデックはリニアPCM、ドルビーデジタル、DTSデジタルサラウンドであり、すべてのBlu-rayプレーヤーがドルビーTrueHDをサポートしているわけではありません。また、DTS-HDマスターオーディオの方がライセンス料が安価なため、近年のBlu-ray DiscではドルビーTrueHDの採用が少なく、ドルビーデジタルやDTS-HDが主流となっています。

規格詳細

ドルビーTrueHDは、HD DVDとBlu-ray Discのどちらでも最大7.1chサラウンド（96kHz/24bit）に対応しています。Blu-ray Discでは、5.1chサラウンド（192kHz/24bit）でのエンコードも可能です。最大ビットレートは18Mbpsで、実際の映画タイトルでは5Mbps程度が割り当てられています。ドルビーTrueHDにはダウンミキシング機能があり、例えば5.1chサラウンドの音声トラックを2.0chステレオ信号に変換できます。

デジタルリンクでの送受信には、符号化されたビットストリーム（最大18Mbps）か、伸張されたリニアPCM（35Mbps）が必要です。HDMI Ver1.1以降であれば、サラウンドのリニアPCMを転送できるため、ドルビーTrueHDをデコードして転送できます。HDMI Ver1.3以降では、ドルビーTrueHDのビットストリームをそのまま転送することも可能です。TOS-Link（S/PDIF|S_PDIF）では、ドルビーデジタルなどにトランスコードしない限りドルビーTrueHDを転送できません。

HDMIを搭載したプレーヤーでは、内部でドルビーTrueHDをリニアPCMにデコードし、HDMI Ver1.1以降のインターフェースに出力できます。PlayStation 3もこの方式をサポートしています。また、プレーヤーでデコードしない設定の場合、ドルビーTrueHDのビットストリームをHDMI Ver1.3以降で転送し、転送先の機器でデコードすることもできます。HD DVDプレーヤーには、TrueHDをドルビーデジタルやDTSに変換する機能もあります。パナソニックのDIGAなど、一部の再生機や録画機にも同様の機能が搭載されています。

初の採用作品

2006年4月18日に発売されたHD DVD版の『オペラ座の怪人』が、ドルビーTrueHDでサウンドトラックを提供する最初のタイトルとなりました。

主な採用媒体と作品

主にHD DVDで採用され、2008年から2009年頃に発売された一部のBlu-ray Discや、ワーナーブラザーズ制作のBlu-ray Discにも採用されています。

主な採用作品としては、以下のものがあります。

洋画 (具体的なタイトルは割愛します)
邦画 (具体的なタイトルは割愛します)
名探偵コナン 緋色の弾丸|名探偵コナン_緋色の弾丸
ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”

関連技術

DOLBY ATMOS：ドルビーアトモスは、より立体的な音響体験を提供するサラウンドサウンド技術です。
DOLBY AUDIO：ドルビーオーディオは、ドルビーデジタル、ドルビーデジタルプラス、ドルビーTrueHDの総称です。
dts:X：DTS:Xは、DTSが開発したオブジェクトベースのサラウンドサウンド技術です。
Auro 11.1：Auro 11.1は、ヨーロッパのAuro Technologiesが開発した3Dオーディオ技術です。
IMAX ENHANCED：IMAX ENHANCEDは、IMAXが認定した高画質・高音質技術です。

外部リンク

ドルビーラボラトリーズ公式サイト - ドルビーTrueHD

ドルビーTrueHDは、高音質を追求した可逆圧縮コーデックであり、特にホームシアター環境での高品質なオーディオ体験に貢献しています。

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