第3世代光ディスク

第3世代光ディスク：Blu-ray DiscとHD DVDの歴史

第3世代光ディスクは、2000年代以降に登場した光ディスクで、青紫色半導体レーザーを用いてデータの記録・再生を行います。これにより、片面1層の12cmディスクで最大25GB程度の容量を実現し、高精細度テレビ（HDTV）画質の映像記録に適するようになりました。主な規格としては、Blu-ray Disc（BD）、Ultra HD Blu-ray（UHD BD）、Professional Disc（PFD、PD）、HD DVD、Ultra Density Optical（UDO）があります。本記事では、特にBDとHD DVDを中心に解説します。

規格競争の背景

第3世代光ディスクが登場する以前は、デジタルハイビジョン放送を収録できる大容量媒体はテープメディアやハードディスクに限られていました。そのため、光ディスクの大容量化が強く望まれていました。また、ハイビジョン対応の大画面薄型テレビの普及が見込まれる中で、映画会社などが高画質映像を収録可能なビデオパッケージ規格を求めたことも、第3世代光ディスクの開発を後押ししました。さらに、既存のDVD市場の成長が鈍化していたことも、次世代規格への期待を高める要因となりました。

主要な参入企業

BDとHD DVDの規格争いは、多くの企業が二つの陣営に分かれて支持したことで激化しました。以下に主な参入企業をまとめます。

Blu-ray Disc陣営

ソニー
パナソニック
シャープ
アップル
ディズニー

HD DVD陣営

東芝
NEC
マイクロソフト
パラマウント映画

両陣営に参入した企業も存在しましたが、どちらかの陣営に近いと考えられる場合は、その陣営に含めています。ただし、規格争いの終結後に移動・離脱した企業も存在します。

規格の比較

呼称と策定団体

BDはBlu-ray Disc Associationによって、HD DVDはDVDフォーラムによって策定されました。そのため、DVDの直接の後継規格はHD DVDとされていましたが、BDは独自に開発された規格でした。

コスト

当初、HD DVDはDVDの製造機器を一部流用できるため、コスト面で有利とされていました。しかし、BDメディアの流通量が増加し、製造コストが低下したことや、BDでも有機素材を用いることでDVD製造設備を流用できる技術が開発されたため、BDが有利になりました。

物理構造

HD DVDとBDでは、記録層の深さが異なり、HD DVDは0.6mm、BDは0.1mmです。この違いは、ディスクの傷への耐性や記録密度に影響を与えています。

記録容量と転送速度

BDは記録層が浅いため高密度記録が可能で、片面1層で25GB、2層で50GBの容量を持っています。一方、HD DVDは片面1層で15GB、2層で30GBです。また、最大転送速度もBDの方が高速で、標準転送速度ではBDが53.95Mbps、HD DVDが36.55Mbpsです。

採用技術

BDとHD DVDは、共通して直径12cmまたは8cmの円盤状で、素材は主にプラスチックです。また、読み取りには波長405nmの青紫色レーザーを用いています。著作権保護技術としては、両規格ともAACSを採用しています。

ビデオ規格

両規格とも多重化フォーマットにMPEG-2トランスポートストリーム、映像コーデックにH.264/MPEG-4 AVCやVC-1を採用し、主に1920×1080ドットの映像を収録します。音声コーデックには、ドルビーデジタル・DTS・リニアPCMに加え、ドルビーデジタルプラス、ドルビーTrueHD、DTS-HDなどの新世代コーデックを採用しています。

インタラクティブ技術

BDはJavaを基にしたBlu-ray Disc Java（BD-J）を、HD DVDはマイクロソフトが開発したHDiを採用しています。

消費者の反応と市場の動向

規格分裂は消費者にとって不利益であるため、規格争いの決着まで購入を控える消費者が多くいました。しかし、両規格に対応した機器やソフトも登場し、互換性の確保が進められました。

DVDとの互換性

HD DVD・BDの再生/記録機器はDVDにも対応しており、メディア側でもDVD機器への互換性を保とうとする動きがありました。HD DVDでは、ツインフォーマットディスクが製品化されました。

バンダイビジュアルの対応

バンダイビジュアルは、「BD+DVD」または「HD DVD+DVD」の2枚組製品を発売しましたが、その後BDに一本化し、BD単品での再発売を行いました。

両対応機器の登場

2006年にはNECエレクトロニクスが両規格に対応したLSIを発表し、その後LG電子やサムスン電子が両規格を再生可能なプレーヤーを発売しました。また、PC用の両対応ドライブも登場しました。

Total Hi Defディスク

ワーナー・ブラザースは、BDとHD DVDの両方を両面に記録したTotal Hi Defディスクを発表しましたが、コストや互換性の問題から、市場での支持を得られず発売は延期され、最終的に発売されることはありませんでした。

BDの普及と競合

ハイビジョン対応テレビの普及に伴い、BDの需要が増加しました。特に2007年の年末商戦では、規格争い中にもかかわらず、BDレコーダーが販売シェアで大きな割合を占めました。その後、BDがデファクトスタンダードとなり、規格争いは終結しました。

しかし、BDの普及後、USBフラッシュメモリやハードディスク、SSDなどの大容量化・低価格化が進み、またネット配信も普及したため、BDはこれらの媒体や配信サービスと競合するようになりました。BDは安定した高画質映像の配信が可能ですが、オンラインストレージサービスやSSDの普及により、光ディスクの需要は減少しています。

まとめ

第3世代光ディスクの規格争いは、最終的にBlu-ray Discが勝利しましたが、その過程で様々な技術革新と市場の変化がありました。現在では、BDは映像コンテンツの物理メディアとして一定の需要があるものの、フラッシュメモリ、ハードディスク、ネット配信などとの競争が激化しています。

参考資料

北川達也「Blu-ray Disc vs. AOD最前線レポート」『DOS/V POWER REPORT』第13巻第9号、2003年9月。

関連項目

ユニバーサルプレーヤー
BDレコーダー、BDプレーヤー
* DVDレコーダー、DVDプレーヤー

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