ドルヴァル

ドルヴァル：歴史と自然が織りなすボスニアの町

ドルヴァル（Drvar）は、ボスニア・ヘルツェゴビナ西部に位置する町で、ボサンスコ・グラホヴォ、ボサンスキ・ペトロヴァツ、グラモスを結ぶ交通の要衝にあります。ディナル・アルプス山脈に囲まれ、ウナ川が流れる豊かな自然環境に恵まれています。

名前の由来と歴史

ドルヴァルという名前は、ボスニア語で「木」を意味する「ドルヴォ」に由来します。その名の通り、古くから森林資源が豊富な地域でした。ユーゴスラビア時代には、ヨシップ・ブロズ・チトーにちなんで「チトフ・ドルヴァル」と呼ばれていました。

先史時代からオーストリア・ハンガリー帝国時代まで

ローマ時代には既に人が居住しており、道路や道標が整備されていました。9世紀にはセルビア人が居住していたという記録が残っています。16世紀には、住民がザグレブ周辺に移住する出来事もありました。

1878年、ボスニア・ヘルツェゴビナはオーストリア・ハンガリー帝国に占領されます。19世紀末には、ドイツ人技師オットー・フォン・シュタインバイスが森林資源の開発に着手し、インフラを整備しました。病院や飲食店などが立ち並び、多くの雇用を生み出しました。しかし、労働環境は厳しく、ストライキが頻発しました。

ユーゴスラビア時代と第二次世界大戦

第一次世界大戦後、ドルヴァルはユーゴスラビア王国の一部となります。1930年代には経済危機に見舞われ、多くの人が職を失いました。

第二次世界大戦中、ドルヴァルはドイツ軍に占領され、その後イタリア軍の占領下に置かれます。クロアチア独立国が樹立されると、セルビア人やユダヤ人などが迫害されました。1944年には、ドイツ軍がチトー暗殺を狙った「騎士の移動作戦」が行われ、激しい空爆を受けました。

ユーゴスラビア社会主義時代

第二次世界大戦後、ドルヴァルは復興し、材木産業を中心に発展を遂げました。チトーの洞窟は観光名所となり、多くの人が訪れました。

ボスニア紛争とその後

1992年から1995年のボスニア紛争中、ドルヴァルはスルプスカ共和国の支配下に置かれました。1995年にはクロアチア軍がドルヴァルを占領し、セルビア人住民は避難を余儀なくされました。紛争後、デイトン合意によってボスニア・ヘルツェゴビナに組み込まれましたが、民族間の対立は根強く残りました。

現在のドルヴァル

現在、ドルヴァルの人口の多くはセルビア人です。しかし、失業率が高く、経済的な困難を抱えています。町には、チトーの洞窟や城などの歴史的な名所が残っています。

ドルヴァルの村

ドルヴァル町には、以下のような村が含まれています。

Ataševac
Bastasi
Boboljusci
Bosanski Osredci
Brda
Bunčevac
Drvar
Gornji Tiškovac
Gruborski Naslon
Kamenica
Ljeskovica
Mali Cvjetnić
Malo Očijevo
Martin Brod
Mokronoge
Motike
Mrđe
Očigrije
Palučci
Podić
Podovi
Poljice
Potoci
Prekaja
Srnetica
Šajinovac
Šipovljani
Trninić Brijeg
Trubar
Uvala
Veliki Cvjetnić
Veliko Očijevo
Vidovo Selo
Vrtoče
Zaglavic

経済と名所

ドルヴァルは、かつてオーストリア・ハンガリー帝国時代には良質な木材の供給地として知られていました。現在でも、木材供給・加工地として重要な役割を担っています。

ドルヴァルには、ドイツ軍によるドルヴァル攻撃を描いた映画『デサント・ナ・ドルヴァル』の舞台となった場所や、チトーの洞窟、城などの名所があります。また、バルカン半島で広く飲まれているラキヤ（蒸留酒）でも知られています。

著名人

ラドミール・コバセビッチ（柔道選手、1980年モスクワオリンピック銅メダリスト）
* ミラン・ロディッチ（セルビア代表サッカー選手）

ドルヴァルは、その豊かな自然と歴史的な背景を持つ魅力的な町です。しかし、紛争の傷跡は深く、経済的な課題も抱えています。今後の復興と発展が期待されます。

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