ドンペリドン

ドンペリドンについて

ドンペリドン（英: Domperidone）は、主に制吐薬や消化管機能改善薬として使用されるドーパミン受容体拮抗薬です。この薬は、主に抗精神病薬に似たメカニズムで作用し、特に消化器系の症状に効果を発揮します。日本国内では「ナウゼリン」という商品名でも知られています。

作用機序

ドンペリドンの作用機序は、吐き気や嘔吐を引き起こすドーパミンD2受容体を拮抗することにあります。D2受容体が活性化されると、吐き気の感覚が引き起こされる上、アセチルコリンの遊離が減少するため、胃の運動が低下します。この薬は、D2受容体を遮断することで吐き気を抑えるだけでなく、上部消化管の運動も促進します。

興味深いことに、ドンペリドンは血液脳関門を通過しにくく、主に上部消化管に作用します。このため、同じくD2受容体に影響を与えるメトクロプラミド（中枢に移行する）のような副作用が少なく、安全性が高いとされています。

副作用

ドンペリドンの副作用は、そのドーパミンD2受容体に対する拮抗作用から生じます。特に、副作用としては、高プロラクチン血症に関連する乳汁分泌、月経異常、乳房の膨満感などが知られています。また、消化器系の症状として、下痢、便秘、腹痛、さらには錐体外路症状、肝機能異常、めまい、眠気などが発生することがあります。特に注意すべきは、長期使用者や高齢者、心疾患を有する患者において、重篤な心室性不整脈や心臓関連のリスクが増加する可能性がある点です。また、QT延長に関連する薬剤や、強いCYP3A4阻害薬との併用は推奨されません。

効能・効果

ドンペリドンは、以下の疾患や薬剤投与時の消化器症状に対して効果があります：

• - 成人：慢性胃炎、胃下垂症、胃切除後症候群、抗悪性腫瘍剤またはレボドパ製剤投与時
• - 小児：周期性嘔吐症、上気道感染症、抗悪性腫瘍剤投与時

用法・用量

成人の場合、通常の用法は、食前に10mgを1日3回経口服用します。ただし、レボドパ製剤と併用する際は、5〜10mgを1日3回に減量することが推奨されます。小児に関しては、体重に応じて1.0〜2.0mg/kgを1日3回服用しますが、1日の最大量は30mgを超えてはならず、6歳以上では1.0mg/kgを上限とします。

妊娠とドンペリドンの使用

ドンペリドンは、動物実験において高用量投与時に欠損症が観察されており、そのため妊婦への使用は控えられています。妊婦に制吐剤を投与する場合は、メトクロプラミドの方が適切とされています。国立成育医療研究センターや虎の門病院が行った疫学研究においては、ドンペリドンを使用した妊婦における奇形発生率はわずかに高かったものの、有意差は示されませんでした。

まとめ

ドンペリドンは、効果的な制吐薬であり、消化器系のさまざまな疾患に対して高い効果を発揮します。ただし、使用に際しては副作用や相互作用に注意が必要であり、特に妊婦や心疾患のある人においては慎重な投与が求められます。

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