ドン・ウィルカーソン

ドン・ウィルカーソン（Don Wilkerson）は、1932年7月6日にルイジアナ州マローヴィルで生まれ、1986年7月18日にテキサス州ヒューストンで生涯を終えたアメリカ合衆国のサクソフォーン奏者、バンドリーダーです。特にリズム・アンド・ブルースやソウル・ジャズの分野で活躍し、そのパワフルでブルージーなテナー・サクソフォーンの音色で知られています。彼の音楽は、ブルースとソウルに深く根ざしており、とりわけテキサス出身のテナー奏者に受け継がれる、いわゆる「テキサス・テナー」の系譜に位置づけられます。

ウィルカーソンの演奏スタイルは、テナー・サクソフォーンではイリノイ・ジャケー、アーネット・コブ、ジーン・アモンズ、ポール・ゴンザルヴェス、ソニー・ロリンズら、またアルト・サクソフォーンのソニー・スティットやアイク・ケベックといった先人たちからの影響を色濃く受けています。特にアイク・ケベックは、彼が名門ブルーノート・レコードからリーダー・アルバムをリリースするきっかけを作った人物としても知られています。

彼の音楽的キャリアは、ルイジアナ州シュリーブポートやテキサス州ヒューストンで公式な音楽教育を受けることから始まりました。学生時代にアルト・サクソフォーンを手にし、テキサス州デイトナでプロとしてのキャリアをスタートさせます。1948年には、エイモス・ミルバーン、ミルト・ラーキン、T-ボーン・ウォーカーといったR&B界の巨匠たちとの共演を果たし、1949年にかけてはロサンゼルスでチャールズ・ブラウンのバンドに参加。西海岸では、デクスター・ゴードン、ウォーデル・グレイ、ソニー・クラークらとのジャムセッションにも参加しました。

1954年の夏には、レイ・チャールズのバンドにテナー・サクソフォーン奏者として参加。「アイ・ガット・ア・ウーマン」、「カムバック・ベイビー」、「ジス・リトル・ガール・オブ・マイン」、「ハレルヤー」といったレイ・チャールズの初期ヒット曲で重要なソロを担当し、その実力を広く示しました。

サイドマンとして名声を得た後、ウィルカーソンはリーダーとしても活動。1960年5月には、初のリーダー・アルバム『ザ・テキサス・ツイスター』をリバーサイドからリリース。この録音には、ナット・アダレイ、バリー・ハリス、リロイ・ヴィネガー、ビリー・ヒギンスらが参加しました。続く1962年から1963年にかけては、ブルーノートと契約し、グラント・グリーンらを迎え、『プリーチ・ブラザー!』、『シャウティン』、『エルダー・ドン』という3枚のリーダー・アルバムを残しました。これらの作品は、彼のソウルフルでブルージーなスタイルが遺憾なく発揮されたものとして、今日でも高く評価されています。

1970年代初頭、活動の中心はヒューストンへ。トム・アーチアやアーネット・コブといった地元の有力ミュージシャンたち、さらにレイ・チャールズ・バンド時代の友人ジョー・ブリッジウォーターらと共に、ソニー・フランクリン・ビッグバンドの録音に参加しました。生涯最後の10年間はアメリカ南西部に住みましたが、1982年にはニューヨークを訪れ、ブルース界の巨匠B.B.キングのアルバム『ブルース・アンド・ジャズ』（Blues 'n' Jazz）の録音に加わるなど、晩年も音楽活動を続けました。

ドン・ウィルカーソンは、リズム・アンド・ブルースとジャズ、特にソウル・ジャズというジャンルにおいて、テキサス・テナーの伝統を受け継ぎ、独自のスタイルを確立した重要な音楽家です。彼の残した数少ないリーダー作品、特にブルーノート盤は、今なお多くのファンに聴かれています。

リーダー・アルバム

『ザ・テキサス・ツイスター』 - _The Texas Twister_ (1960年、リバーサイド)
『プリーチ・ブラザー!』 - _Preach Brother!_ (1962年、ブルーノート)
『シャウティン』 - _Shoutin'_ (1963年、ブルーノート)
『エルダー・ドン』 - _Elder Don_ (1963年、ブルーノート)

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