ドン・ウィルソン (ギタリスト)

ドン・ウィルソン:ベンチャーズを支えたリズムギターの巨匠



ドナルド・リー・"ドン"・ウィルソン(Donald Lee "Don" Wilson, 1933年2月10日 - 2022年1月22日)は、アメリカを代表するインストゥルメンタル・ロックバンド、ザ・ベンチャーズのオリジナルメンバーとして、リズムギターを担当し、その音楽的基盤を支えたギタリストです。ワシントン州タコマで生まれ、88歳で老衰のため亡くなるまで、音楽界に多大な影響を与えました。

生い立ちと音楽への目覚め



最初に手にした楽器はティップルという10弦楽器でしたが、トロンボーン奏者のトミー・ドーシーに憧れ、トロンボーンのレッスンを受けました。その後、ギターに転向し、高校時代にはレスリングの選手として活躍する傍ら、音楽への情熱を育みました。高校卒業後は、様々な仕事を経て陸軍に入隊し、マーチングバンドでトロンボーンを担当しました。除隊後は、中古車セールスマンや建設現場の仕事をする傍ら、ギターの練習に励みました。

ベンチャーズ結成と成功



1959年、中古車ディーラーで働いていたドンは、偶然訪れたボブ・ボーグルと出会います。ギターケースがきっかけで意気投合した二人は、ボブの紹介で同じ建設会社に転職し、夜はパーティーやクラブで演奏するようになりました。当時のレパートリーは、レス・ポールチェット・アトキンスのアレンジが中心でした。ドンの母親ジョシーの支援を得て、プライベートレーベル「BlueHorizon」を設立。バンドはVersatones、ザ・インパクツと名前を変え、最終的にジョシーのアイデアでザ・ベンチャーズとして活動を開始しました。

ドンはグループの中心メンバーとして、数々のヒット曲を生み出し、世界的な成功を収めました。ファンからは「ドンさん」の愛称で親しまれ、ステージ上ではコミカルな演出やジョークを交え、観客を楽しませるエンターテイナーとしての一面も持ち合わせていました。

音楽性と演奏スタイル



ドンの演奏スタイルは、常にリズムを重視したサイドギターが基本でした。しかし、単なる伴奏に留まらず、弦を掻き鳴らすノイズや歯切れの良いコードストロークで楽曲をリードし、「メロディを弾かないリードギター」とも評されました。特に、「パイプライン」や「ダイアモンド・ヘッド」などの楽曲におけるクロマチックラン奏法(テケテケ)では、リバーブエフェクターを最大限に活用し、独特のサウンドを生み出しました。

彼はghs社製のミディアムゲージの太い弦を使用し、コードストロークとテケテケ奏法でピックを使い分けるなど、細部にまでこだわりを持って演奏していました。インタビューでは、「サイドギターもその存在を主張するべき」という独自の「リズムギター論」を語り、リズムギターでロックンロールを追求する姿勢を示しました。

使用機材



ドン・ウィルソンは、数多くのギターやアンプを愛用しました。特に有名なのは、モズライト・ベンチャーズモデルやフェンダー・ジャズマスターで、長年にわたり使用しました。アンプは、モズライト、ローランド、フェンダーなど、様々なメーカーのものを試しましたが、最終的にはカノウプスとの共同開発による「サーフ・リバーブ・アンプ」に辿り着きました。クリアな音質を追求し、エフェクターはほとんど使用しませんでしたが、レコーディングではスプリングリバーブを使用することもありました。

その他の活動と晩年



ドンは、2015年にツアーからの引退を発表しましたが、レコーディングなどの活動は継続しました。息子のティム・ウィルソンと共に、ギターブランド「Wilson Brothers Guitars」を設立し、自らもギターを使用しました。また、インディーズレーベル「Northwest Green Records」を立ち上げ、音楽活動をサポートしました。大の日本好きで、ラーメン、すき焼き、寿司、居酒屋メニューなどを好んでいました。晩年はパソコンに熱中し、ネットサーフィンを楽しんでいたそうです。

日本への貢献とレガシー



ドン・ウィルソンとザ・ベンチャーズは、1960年代のエレキギターブームを日本にもたらし、多くの若者に音楽の楽しさを伝えました。彼の音楽は、世代を超えて愛され続け、日本の音楽シーンに多大な影響を与えました。2022年1月22日に88歳で亡くなりましたが、彼の音楽と精神は、これからも多くの人々に受け継がれていくでしょう。

使用機材詳細



ギター
モズライト・ベンチャーズモデル
モズライト・コンボ
フェンダー・ジャズマスター
フェンダー・ストラトキャスター
ギブソン・SG
ギブソン・ES-175
アリアAP・ドン・ウィルソン・シグネチャー・モデル
アリア・ベンチャーズモデル
Wilson Brothers The Ventures Signature Model
アンプ
Mosrite Award Bg-1000
Roland JC-120(エレクトロボイス社製スピーカーに交換)
フェンダー・バンドマスターアンプ
カノウプス・サーフ・リバーブ・アンプ
EVHギターズ・5150Ⅲ
メサブギー・Triple Rectifier Solo Head (アメリカツアーのみ)
フェンダー・Fender Reverb'63
* グヤトーン、エルク、テスコ、ヤマハ等日本製ギターアンプ

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