ドーニー

ドーニー：モルディブの伝統的な多目的帆船

ドーニー（ディベヒ語: ދޯނި／Dhoni）は、モルディブで古くから使われている伝統的な帆船です。大三角帆やエンジンを備え、多目的に利用されています。この船は、モルディブの島々を結ぶ重要な交通手段であり、漁業においても欠かせない存在です。手作業で丁寧に作られるドーニーは、モルディブの文化と密接に結びついています。

ドーニーの特徴と構造

ドーニーは、アラブのダウ船に似た形状をしていますが、モルディブ独自の進化を遂げてきました。伝統的には、ココナツの厚板を材料として作られていましたが、近年では中東からの輸入木材やグラスファイバーも使用されています。ドーニーの主な製作地はアリフシラー環礁で、熟練した職人たちが若い見習いを指導しながら、伝統的な技術を受け継いでいます。木材から船を完成させるには約60日を要すると言われています。

ドーニーは、元々は帆走用の船でしたが、近年ではほとんどの船にエンジンが搭載されています。エンジン式のドーニーは、高速航行が可能で、操舵輪や椅子、ベンチを備えているものが多くなっています。伝統的なドーニーは、ココヤシの木材を使って作られ、モルディブで最も古い船の一つとされています。かつては帆のみで進む帆走式ドーニーが主流でしたが、産業革命以降、多くの漁師がエンジン付きドーニーに乗り換えています。

ドーニーと漁業

モルディブの漁業は、ドーニーと深く結びついています。モルディブの島々は広範囲な漁船団を保有しており、そのほとんどがドーニーの類です。各漁船には8～12人が乗り込み、漁業に従事しています。一方、2〜3人乗りで大三角帆を持たない小型の船は「ボックラ」と呼ばれます。

1995年の時点で、モルディブには1,674艘の漁船が登録されていました。その内訳は、マグロ漁を行うエンジン式の竿釣り漁船（マスドーニー）が1,407艘、帆走式マスドーニーが5艘、エンジン式バフドーニーが48艘、帆走式バフドーニーが209艘、そして浅瀬での手漕ぎ漁船が5艘でした。

ドーニーの歴史と変遷

ドーニーという言葉は、コンカニ語で小さい船を意味する「ドニ」に由来すると考えられています。この言葉は、アラブ、ゴア、インドのコンカン地域、そして西海岸の港町との貿易関係を示唆しているかもしれません。

1980年代には、国際開発協会（IDA）からの貸付金により、モルディブの漁船の機械化が進みました。これにより、エンジン付きのドーニーが増加し、燃料代は増加したものの、1982年から1985年の間に漁獲高は倍増しました。1992年には漁獲高は82,000トンに達し、1987年の56,900トンから大幅に増加しました。

現代におけるドーニー

現在でも、ドーニーはモルディブの人々の生活と文化に深く根ざしています。漁業だけでなく、観光客の輸送や物資の運搬など、様々な場面で活躍しています。伝統的な製法を受け継ぎながらも、グラスファイバー製など新しい素材を用いたドーニーも登場しており、その進化は続いています。

ドーニーは、モルディブの歴史と文化を象徴する重要な存在であり、その伝統と技術は、今後も大切に受け継がれていくでしょう。

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