ナイアシン

ナイアシン（Niacin）について

ナイアシンは、ニコチン酸およびニコチン酸アミド（ナイアシンアミド）の総称であり、ビタミンB3としても知られています。この水溶性ビタミンは、エネルギーの代謝において酸化還元酵素の補酵素として機能し、糖質、脂質、タンパク質の代謝に不可欠な役割を果たします。また、循環系、消化系、神経系の働きの促進にも寄与しています。

摂取と生合成

ナイアシンは、主に食事から摂取されるほか、体内でトリプトファンから生合成されます。人間の腸内にはトリプトファンをナイアシンに変換する腸内細菌も存在し、通常の食生活で不足することは少ないとされています。しかし、トウモロコシを主食とする生活圏ではトリプトファンを十分に摂取できず、結果としてナイアシンの欠乏が起こり、ペラグラ等の欠乏症状が現れることがあります。

1日あたりの摂取推奨量

ナイアシンの1日の推奨摂取量は成人男性14-17 mgNE、成人女性12-13 mgNEです。トリプトファンを元にナイアシンが生合成されることから、食品に含まれるナイアシンの量だけでなく、トリプトファンからどのくらい生産されるかを考慮して算出されます。通常、ナイアシンを多く含む食品には、カツオ、サバ、ブリ、イワシ、レバー、鶏ささみ、マグロ、豆類などがあります。

欠乏症と過剰症

ナイアシンが不足すると、ペラグラや口舌炎、下痢、皮膚炎などの症状が現れますが、これらは多彩であっても致命的ではありません。しかし、ナイアシンを過剰に摂取した場合、特に1日100 mg以上の摂取で皮膚の紅潮やヒリヒリした感覚が生じる「ナイアシンフラッシュ」が引き起こされることがあります。さらに、高用量のナイアシンは肝障害のリスクを高めることがあります。

注意事項

高用量のナイアシン摂取は血糖値や尿酸値を上昇させる可能性があるため、特に糖尿病や痛風の患者は注意が必要です。特に、ナイアシンの合成に重要な酵素やビタミンの欠乏は、ナイアシンの必要性を高める原因となることがあります。また、調理の際には、ナイアシンは水溶性であるため、煮汁への流出に注意する必要があります。

生化学的経路

ナイアシンの生合成は、トリプトファンが体内で一連の酵素反応を経てキノリン酸に変換され、その後、ニコチン酸やNADへと変わります。また、ナイアシンは体内で相互に変換可能な形態としてニコチン酸モノヌクレオチド（NaMN）やニコチンアミドアデニンジヌクレオチド（NAD）として存在します。

ナイアシンは、結核菌が多量に産生する特性を利用して、結核の診断に用いるナイアシン試験にも関連しており、ビタミンB3としての重要性は多岐にわたります。

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