ナグマホン

ナグマホン（Nagmachon）

ナグマホンはイスラエルで開発された重装甲の歩兵戦闘車（IFV）です。イスラエル国防軍は、パレスチナ自治区における過激派やテロリストとの戦闘のために、高い防御力を持つ車両を求めていました。それまで使用されていたアメリカ製のM113ゼルダは、RPG-7やKPV 14.5mm重機関銃、対戦車地雷に対する耐性が低いとされていました。

これを受けて、ナグマショットという装甲兵員輸送車（APC）が開発されました。ナグマショットは、余剰になったメルカバ戦車の砲塔を撤去して密閉式の戦闘室を設け、MAG 7.62mm機関銃を装備しました。しかし、ナグマショットは後部に昇降ドアがなく、装甲兵員輸送車としては機能に欠ける部分がありました。結果、イスラエル軍は、T-54/T-55戦車を改修したアチザリットを新たな装甲兵員輸送車として採用しました。

ナグマショットは、装甲兵員輸送車からパトロールや暴徒鎮圧に任務をシフトし、その後さらなる改修が行われ、ナグマホンという名前へと変更されました。ナグマホンは、基本車体はナグマショットとほぼ同じですが、低強度紛争（LIC）への対応としてさまざまな改良が施されています。これには、操縦士用ハッチの強化、ブレーザーERAの拡大、発煙弾発射機の装備、車体の側面の強化、そして防弾板の設置が含まれています。これにより、ナグマホンは本来の装甲兵員輸送車の機能から離れ、偵察や治安維持活動に特化した歩兵戦闘車としての性質が強調されています。

2000年代に入ると、ナグマホンの戦闘室の上に「ドッグハウス」と称される大型の戦闘室が追加され、2から4挺のMAG 7.62mm機関銃を装備するモデルも登場しました。これにより、車両内部から射撃が可能となり、外観は異様な印象を与えています。ドッグハウスの周囲には中空装甲のフェンスやスラットアーマーが装着され、特別な防御力を持っています。また、ナグマホンの中にはメルカバ用の全鋼製転輪を使用しているものも存在しますが、サスペンションに関しては元のセンチュリオン車体がそのまま使用されています。

1990年代にはナグマショットおよびナグマホンをベースにしたナクパドン装甲兵員輸送車も開発されましたが、これには少数しか配備されていません。ナグマホンのバリエーションには、ドッグハウス型のNAGMACHON DOGHOUSEやDOGHOUSE II、電子戦に特化したNAGMATRUC、長距離通信用のNAGMAPOPなどがあります。

ナグマホンは、映画『ボーフォート レバノンからの撤退』にも登場し、その現実の車両が撮影に使われたことで知られています。

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