ナダレ定石

ナダレ定石とは

ナダレ定石は、囲碁の定石の中でも特に難解で変化が多いことで知られる定石の一つです。小目への一間高ガカリに対して、黒が下ツケすることで発生する形を指します。この定石は、序盤から激しい接触戦となることが多く、また、その変化の多さから、正確な判断と深い読みが求められます。

その名の由来は、石が接触しながら戦いが進んでいく様子が、雪崩が起きる様を連想させることから来ています。この名前を付けたのは、囲碁ライターの三堀将氏とされています。

歴史と基本形

ナダレ定石の研究が本格的に始まったのは昭和時代に入ってからです。それ以前は、プロ棋士の間ではあまり採用されていませんでした。しかし、アマチュアの間では比較的よく打たれていた形であり、その複雑さから研究が進められました。

基本形は、小目に対する一間高ガカリに、黒が下ツケした際に、白がさらに二段に構える形です。この形から、黒は様々な応手を繰り出すことができ、その後の展開は非常に多岐にわたります。

特に重要なのは、黒の応手によって派生する小ナダレ定石と大ナダレ定石です。小ナダレは、比較的シンプルな形ですが、それでも複雑な戦いになることが多く、一方の大ナダレは、非常に長手順で難解な定石として知られています。

ナダレ定石の種類

ナダレ定石からの黒の応手にはいくつかの選択肢がありますが、代表的なものとして以下の3つが挙げられます。

1. 簡明な形: 黒が大人しくツケる形。白がノビる程度で、穏やかな分かれとなります。白は手抜きも可能です。
2. 小ナダレ: 黒がハネる形。白も応じて、複雑な戦いになります。
3. 大ナダレ: 黒がノビてからハネる形。非常に複雑で長手順の定石となります。

小ナダレ定石

小ナダレ定石は、黒がハネることで始まる、激しい接触戦が特徴的な形です。この形は、その後のシチョウ関係や周囲の状況によって、戦いが大きく変わるため、注意が必要です。

最近では、人工知能の登場により、小ナダレに対して黒が大人しくサガることで、あっさりと地を確保する打ち方も増えてきています。また、黒がハッて上辺を地化する打ち方もあります。

大ナダレ定石

大ナダレ定石は、黒がノビてからハネることで始まる、非常に複雑で長手順の定石です。この形には、黒が内側にマガる形と、外側にマガる形の2種類があり、どちらも難解な定石として知られています。

初期には外マガリが主流でしたが、呉清源によって内マガリが打ち出されてからは、内マガリが主流になりました。しかし、現在でも、この定石は常に新しい研究が進められており、その変化は非常に多岐にわたります。

大ナダレ定石の異手順

大ナダレ定石には、いくつかの異手順も存在します。例えば、黒の下ツケに対して、白が引くという形があります。この場合、黒がさらに這うと、大ナダレに発展します。

また、小目に対して白が二間高ガカリした場合も、大ナダレに発展する可能性があります。

実戦譜

ナダレ定石は、プロの対局でも頻繁に登場します。ここでは、いくつか実戦譜を紹介します。

初期外マガリ定石: 1947年の本因坊戦での一局では、大ナダレに白の外マガリ形しか無かった時代に、黒が積極的に戦いを挑みましたが、結果として白が勝利しています。
新手内マガリ: 1957年の日本最強決定戦では、呉清源が初めて大ナダレの内マガリ形を打ちました。その後、この形は改良され、定石として確立されました。
* 世界戦でハメる: 1997年の世界囲碁選手権では、王立誠が新形の大ナダレを打ち、相手をハメて勝利しました。

まとめ

ナダレ定石は、囲碁の中でも特に難解で奥深い定石の一つです。その変化の多さから、常に新しい研究が進められており、プロ棋士の間でも油断できない戦いが繰り広げられています。アマチュア棋士にとっても、ナダレ定石を理解することは、棋力向上に不可欠な要素と言えるでしょう。

もう一度検索