ナニワズ

ナニワズ（Daphne jezoensis）

ナニワズは、ジンチョウゲ科ジンチョウゲ属に分類される落葉性の小低木です。別名としてエゾナニワズやエゾナツボウズとも呼ばれています。この植物は、オニシバリの亜種やカラフトナニワズの変種として扱われることもあります。

特徴

ナニワズは高さが50cm程度まで成長し、全体に無毛で、太い枝がまばらに分かれます。葉は枝の先端に互い違いに生え、薄い質感を持っています。葉の形は倒披針状長楕円形で、長さ3～8cm、幅1～3.5cm程度です。葉の先端は丸みを帯び、基部は細長い楔形をしています。オニシバリと比較すると、葉は一回り大きいのが特徴です。葉の縁は滑らかで、4～7対の側脈があり、裏面はやや白っぽい粉を帯びています。葉柄はほとんどありません。

ナニワズは、オニシバリと同様に真夏に葉を落とし、秋になると新しい葉と翌春に咲く花の蕾をつけます。雌雄異株であり、花期は4月から5月にかけてです。花は黄色で、枝先に束状に多数咲き、芳香があります。花弁に見える部分は萼裂片で、萼筒は長さ4～9mm、萼裂片は長さ4～7mmでほぼ同じ長さです。萼裂片は4つに分かれて開き、雄しべは8個で、萼筒の内側に上下4個ずつ付いています。子房は萼筒の底に1個あります。果実は液果で、最初は緑色ですが、8月から9月にかけて赤橙色に熟します。

分布と生育環境

ナニワズは、日本の本州（福井県以東・福島県以北の日本海側）、北海道の山地に分布しており、山林の中に点在して生育します。また、南千島や樺太南部にも分布しています。

和名の由来

植物学者の牧野富太郎は、著書『新牧野日本植物圖鑑』の中で、ナニワズの語源は、オニシバリの長野県における方言であると述べています。長野県の人々が、北海道でオニシバリに似たこの植物をナニワズと呼んだことが始まりだとされています。

一方、『植物和名の語源』の著者である深津正は、牧野の説の他に、オニシバリの別名であるナツボウズが転訛したという説を紹介しています。さらに深津は、個人の解釈として、難波津の歌「難波津に咲くや此の花冬ごもり 今は春べと咲くや此の花」を引用し、この歌の「咲くや此の花」は梅の花を指すとされるが、雪深い北国の人々が、雪が残る早春に咲くナニワズを見て、春の訪れを感じ、この歌を重ね合わせ、いつしかナニワズ（難波津）と呼ばれるようになったのではないかという説を提唱しています。

参考文献

佐竹義輔他編『日本の野生植物 木本II』、1989年、平凡社
深津正著『植物和名の語源』、1999年、八坂書房
牧野富太郎原著、大橋広好・邑田仁・岩槻邦男編『新牧野日本植物圖鑑』、2008年、北隆館
茂木透、勝山輝男他『樹に咲く花（離弁花 2）山溪ハンディ図鑑4』、2000年、山と溪谷社
* 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」（YList）

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