ナーシリーヤ

ナーシリーヤ（Nāṣirīyah）

ナーシリーヤは、イラクの都市であり、ジーカール県の県都です。バグダードの南東約360kmに位置し、ユーフラテス川のほとり、古代都市ウルの近傍にあります。2018年の概算人口は約558,400人です。日本語では「ナーシリーヤ」と表記されることが多いですが、原語の発音に近い「アン＝ナースィリーヤ」という表記も用いられます。

住民の多くはシーア派イスラム教徒です。市内には博物館があり、シュメール、アッシリア、バビロニア、アッバース朝など、古代メソポタミア文明に関する貴重なコレクションを所蔵しています。また、近隣にはウルやラルサといった古代都市の遺跡が存在し、歴史的な観光資源となっています。

歴史

ナーシリーヤは1870年頃、ムンタフィク部族連合のシャイフであるナースィル・サアダーン・パシャによって建設されました。都市の名前は彼にちなんで名付けられました。

第一次世界大戦中、ナーシリーヤはオスマン帝国の支配下にありましたが、イギリス軍によって征服されました。この戦いでは、イギリス・インド兵約400名が2000名以上のトルコ兵を殺害したとされています。

1930年代には、アッシリア人のバスラ電気供給局員であったユースフ・サルマーン・ユースフらによって、イラク共産党がナーシリーヤで結成されました。1940年代には、君主制に対する反対運動の中心地となり、1958年のアブドルカリーム・カーシムによるイラク革命では、共産党の影響を受けた学生組合、農民組織、労働者が重要な役割を果たしました。

湾岸戦争時には、アメリカ軍第101空挺師団がナーシリーヤ郊外の主要道路に進出し、多国籍軍がイラク領内に進入した最深部となりました。アメリカ軍撤退後、ナーシリーヤのシーア派住民はサッダーム・フセイン政権に対する反乱に参加しました。

2003年のイラク戦争では、激戦地の一つとなりました。国際戦略研究所のフィリップ・ミッチェルは、ガーディアン紙上でナーシリーヤの戦略的重要性を指摘しています。3月23日から29日にかけて、アメリカ海兵隊とイラク軍の間で激しい戦闘が行われ、3月23日にはジェシカ・リンチを含む多数の兵士が捕虜となりました。同年11月には、自動車爆弾テロによりイタリア兵17名が死亡しました。

ナーシリーヤは、その歴史を通じて、様々な勢力による支配と紛争を経験してきました。現代においても、イラクの政治・社会情勢に大きな影響を与え続けています。

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