ニギハヤヒ

邇芸速日命（ニギハヤヒ）

邇芸速日命（にぎはやひのみこと、饒速日命）は、日本神話に登場する神であり、特に物部氏の祖神として知られています。その降臨と神武天皇との関係は、古代史における重要なテーマの一つです。

神話における記述

『古事記』や『日本書紀』によると、ニギハヤヒは神武東征に先立ち、天照大神から十種の神宝を授かり、天磐船に乗って河内国哮ヶ峯（現在の大阪府交野市付近）に降臨したとされます。その後、大和国に移り住んだとされています。

ニニギノミコトの天孫降臨とは異なる系統の説話であり、大和地方に神武天皇以前から存在した勢力との関連を示唆する説もあります。

ニギハヤヒと神武天皇

神武天皇（イワレビコ）が東征の際、ニギハヤヒはナガスネヒコを通じて登場します。ナガスネヒコはニギハヤヒを奉じていましたが、神武天皇が天照大神の子孫であることを知ると、ニギハヤヒは神武天皇に帰順し、忠誠を誓ったとされています。

ただし、『先代旧事本紀』では、ニギハヤヒは神武東征の時点で既に亡くなっており、神武天皇との直接的な関係は描かれていません。

物部氏との関係

ニギハヤヒは、祭祀を司る有力氏族である物部氏の祖神とされています。物部氏は、ニギハヤヒを奉斎し、その神威をもって大和朝廷に貢献しました。

神名について

ニギハヤヒは、文献によって様々な名前で呼ばれています。

『古事記』: 邇藝速日命
『日本書紀』: 饒速日命、櫛玉饒速日命
『先代旧事本紀』: 饒速日命、天照国照彦天火明櫛玉饒速日尊、天火明命

これらの別名は、ニギハヤヒの多面的な性格を示していると考えられます。

降臨に随伴した神々

『先代旧事本紀』には、ニギハヤヒの降臨に際して、多くの神々が随伴したと記されています。これらの神々は、尾張氏、忌部氏、中臣氏など、有力な氏族の祖先神として祀られています。

墳墓

ニギハヤヒの墳墓は、奈良県生駒市白庭台にある白庭山とされています。

邇芸速日命をめぐる諸説

出雲王権との関係: ニギハヤヒは、神武天皇以前に大和地方に存在した出雲系の王権と関係があったとする説があります。
物部氏の勢力: ニギハヤヒは、大和地方に存在した何らかの勢力と物部氏の結びつきを示す存在であるとする説もあります。
天火明命との同一視: 『先代旧事本紀』では、ニギハヤヒは天火明命（アメノホアカリ）と同一神とされています。しかし、『新撰姓氏録』では、ニギハヤヒは天神、天火明命は天孫として区別されています。

まとめ

邇芸速日命は、日本神話において重要な役割を担う神であり、物部氏の祖神として、また神武天皇との関係を通じて、古代史における様々な謎を秘めています。その存在は、古代日本の政治・文化・宗教を理解するための重要な鍵となるでしょう。

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