ニコニコ堂

株式会社ニコニコ堂

概要と創業

株式会社ニコニコ堂は、かつて熊本県に本拠を置き、スーパーマーケットチェーンを中心に多様な事業を展開していた企業です。その歴史は、創業者・林康治氏が中国福建省出身の両親のもと日本で生まれ、1950年に熊本市河原町でセーターの卸売業「林康治商店」を始めたことに遡ります。一度火災に見舞われたものの、1958年には「ニコニコ堂」として再起。1960年11月には株式会社化し、小売業へ本格参入しました。熊本市上通りにオープンした衣料品スーパーは、地域で初めてセルフサービス方式を導入した画期的な試みでした。

成長戦略と多角化

1970年代には、百貨店法やその後の商業活動調整協議会による規制に対応しつつ、主に売場面積300m2以下の小型店を熊本市周辺に集中的に出店するドミナント戦略を推進し、急速な成長を遂げました。事業内容は衣料品スーパーから総合スーパー、食品スーパーへと拡大。さらに、ディスカウントストア「ビッグウェイ」や食品ディスカウントストア「スーパーバリュー」、書店「Books24」、家電量販店、雑貨店、CD/テープ専門店など、様々な専門店も展開しました。1984年には会員制宅配サービス事業「フレッシュニコニコドー」も開始。また、パチンコ店のチェーン展開も行っており、一時は売上高の約4分の1を占めるほどの規模になりました。1990年代には大型店化も進め、サンピアンシティーモールやクリスタルモールはませんといった大型ショッピングセンターも開発・運営するなど、積極的に事業を拡大しました。

上場と海外事業

経営基盤の強化を図り、1994年12月21日には福岡証券取引所に、1997年2月25日には大阪証券取引所第2部に上場を果たしました。海外事業にも進出し、1980年代後半からは中国本土への投資を開始。香港に設立した不動産会社を投資母体として、桂林市での百貨店やホテル、北京市や上海市、大連市などでのホテル運営や縫製工場、商社事業を手掛けましたが、中国事業の不振などにより1999年に撤退しました。

企業スポーツ活動

企業活動の一環として、スポーツ支援にも力を入れていました。1981年に社会人野球部、1987年に女子陸上競技部、そしてラグビー部を創設。特に女子陸上競技部は、熊本県出身のランナー、松野明美選手の活躍で全国的に有名になり、全日本実業団対抗女子駅伝競走大会で上位入賞を果たすなど実績を残しました。野球部にはビクトル・メサ氏（後にキューバ代表監督）、ラグビー部には藤井雄一郎氏（後に静岡ブルーレヴズ監督）など、後に著名となる人物も所属していました。

経営悪化と経営破綻

積極的な多角化と拡大路線を進める一方で、経営は次第に厳しさを増していきました。特に中国事業からの撤退などによる損失が大きく影響し、1998年3月期には約25億円の連結最終赤字を計上。業績不振からの脱却を目指し、既存店の業態転換（食品ディスカウントストア化）、中国事業からの完全撤退、希望退職者の募集による人員削減など、様々な再建策を実行しましたが、好転には至りませんでした。2000年には創業家出身の林瑞栄社長が退任し、外部からトリアスの平山敞氏が後任社長に就任するなど、経営体制も刷新されました。

事業承継と法人消滅

しかし、再建は叶わず、2002年4月9日、約1070億円という巨額の連結負債を抱え、民事再生法の適用を申請し、事実上経営破綻しました。当時提携関係にあったダイエーは提携解消を表明。再生手続きのスポンサーには、広島を拠点とする同業のイズミが選定されました。イズミは、一部大型店舗の営業をイズミの子会社（後のゆめタウン熊本）へ譲渡し、その賃料収入を債務返済資金に充当。また、残る中小型店の食品スーパー事業については、ニコニコ堂とイズミの共同出資で設立された新会社「株式会社ゆうあいマート」（現：ゆめマート熊本）へ承継され、「ニコニコドー」の店名を維持して営業を継続しました。ニコニコ堂本体は不動産管理会社として存続を図ったものの、2007年2月25日付でゆめタウン熊本に吸収合併され、企業体としての幕を閉じました。事業を承継した各社もその後イズミ本体に統合されるなど再編が進み、2010年3月、最後まで「ニコニコドー」の名称で営業していた松島店が「ゆめマート松島店」と改称されたことで、「ニコニコ堂」という屋号は完全に姿を消しました。

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