ニコライ・ザレンバ

ニコライ・ザレンバの生涯と業績

ニコライ・ザレンバ（1821年6月3日 - 1879年4月8日）は、ロシアで活躍した音楽教師、理論家、作曲家です。彼はベラルーシのヴィーツェプスク近郊で生まれ、若い頃から音楽に深い関心を寄せていました。ザレンバはベルリンにてアドルフ・ベルンハルト・マルクスに音楽理論を学び、その後サンクトペテルブルク大学を経て、1854年にサンクトペテルブルクのルーテル教会合唱団の指揮者に就任します。

教育と音楽院での役割

1859年にはロシア音楽協会が設立した音楽教室の教師となり、1862年に新たに開校されたサンクトペテルブルク音楽院では教授として多くの学生を指導しました。彼が教えた生徒には、後に著名な作曲家となるピョートル・チャイコフスキーや、指揮者、ピアニストとして活躍したワシーリー・サフォーノフなどが含まれています。ザレンバは1867年から1871年まで同音楽院の院長を務め、その間に多くの才能ある音楽家を育成しました。

音楽の潮流と保守主義

ザレンバはアントン・ルビンシテインの支援者の一人として知られ、ロシア音楽のアカデミズムと保守的潮流を代表する人物でもあります。彼はロシア国民楽派を主導するミリイ・バラキレフと意見が対立し、特にモデスト・ムソルグスキーからは風刺の対象にされました。ムソルグスキーは彼の保守的な立場を、オラトリオ『マカベウスのユダ』の旋律を引用することで皮肉りました。

1867年にルビンシテインがロシアを去った後、ザレンバが音楽院の院長となりましたが、彼が抱える運営面の問題には帝室の影響が関わっており、1871年にエレナ・パヴロヴナ大公妃の圧力により、教育内容が変更される事態に。ザレンバはこの変化に反対し、結局解任されてしまいます。

作曲活動と遺産

解任後、ザレンバは作曲活動に専念しました。彼の作品には序曲2曲、弦楽四重奏曲1曲、ピアノ曲9曲、数多くの合唱曲やオラトリオ『洗礼者ヨハネ』などが含まれています。1878年に脳卒中に倒れた後、1年後にサンクトペテルブルクで生涯を閉じ、同地のヴォルコヴォ墓地に埋葬されました。彼の妻子はスイスのモントルー近郊に移住し、ザレンバの作品の自筆譜が隠されていたことが2010年に発見されるまで、普及しませんでした。

チャイコフスキーとの関わり

ザレンバが音楽教室の教師であったころ、チャイコフスキーの教え子としても知られています。チャイコフスキーはザレンバに音楽理論を学んだことで、音楽院へ入学する決意を固めたと伝えられています。しかし1866年には、チャイコフスキーが作曲中の交響曲第1番の楽章を彼に見せた際、ザレンバはアントン・ルビンシテインと共にその作品を酷評しました。

ニコライ・ザレンバは、19世紀のロシア音楽の重要な舞台で活動し、多くの後進の育成に貢献した人物です。彼の影響は今なお語り継がれています。

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