ニコライ・チェレプニン

ニコライ・ニコラエヴィチ・チェレプニン（1873年5月3日 - 1945年6月27日）は、ロシアのサンクトペテルブルク出身の作曲家、ピアニスト、そして教育者です。当初は法律家を目指していましたが、音楽への情熱を抑えきれず、サンクトペテルブルク音楽院でニコライ・リムスキー＝コルサコフに師事しました。その後、音楽院の指揮科教授に就任し、帝室マリインスキー劇場の指揮者としても活躍しました。

1909年から1914年にかけては、セルゲイ・ディアギレフが主宰するロシア・バレエ団の指揮者として、パリ公演を含む数々の舞台でタクトを振るいました。しかし、1917年のロシア革命を機に、1918年にグルジアへ亡命し、トビリシ音楽院の院長に就任。その後、1921年の赤軍によるグルジア侵攻を避けて、イスタンブールを経由してパリへと逃れ、フランスでその生涯を終えました。

チェレプニンは、フランス印象主義音楽の影響を強く受けた最初のロシア人作曲家の一人とされています。彼の作品は、古典的で明晰な構成、そして軽妙洒脱な響きが特徴です。ロシアの作曲家としては珍しく、息の長い旋律をじっくりと持続させたり、深刻な劇的な表現を発展させたりすることは得意ではありませんでしたが、その独自の音楽スタイルは多くの人々に愛されました。

教育者としては、サンクトペテルブルク音楽院でニコライ・ソコロフやマクシミリアン・シテインベルクらと共に、熱心な教師として知られていました。彼の愛弟子の一人には、著名な作曲家セルゲイ・プロコフィエフがいます。プロコフィエフはしばしばチェレプニン邸を訪れており、チェレプニンの息子であるアレクサンドル・チェレプニンに大きな影響を与えました。

チェレプニンの家族構成にも触れておくと、息子のアレクサンドルもまた作曲家として名を馳せました。妻のマリヤは、水彩画家アルベルト・ベノワ（アレクサンドル・ベノワの弟）の娘でした。

チェレプニンの主要作品には、以下のものがあります。

バレエ音楽「アルミードの館」op.29（1908年）
バレエ音楽「クレオパトラ」(1909年)
バレエ音楽「ナルシスとエコー」op.40（1911年）
バレエ音楽「赤き死の仮面」(1922年) ‐ エドガー・アラン・ポーの「赤死病の仮面」を基とする
バレエ音楽「ロシアのお伽話」(1923年)
バレエ音楽「ミイラ物語」(1924年)
「遠き王女のための前奏曲」op.4
「魔法にかけられた王国」op.39
ピアノ伴奏付き声楽「六つのメロディ」Op. 1
聖体礼儀（無伴奏声楽正教会聖歌・1番から3番まで）
* タチ・タチ：ピアノと管弦楽のためのボロディン、キュイ、リャードフ、リムスキー＝コルサコフ、リストの主題によるパラフレーズ

これらの作品は、チェレプニンの音楽的特徴をよく表しており、今日でも演奏会などで取り上げられています。

チェレプニンは、1945年にパリで亡くなり、郊外のサント＝ジュヌヴィエーヴ＝デ＝ボワのロシア人墓地に、息子のアレクサンドルと共に埋葬されています。

彼の音楽は、ロシア音楽史において独自の地位を占めており、後世の作曲家たちにも影響を与え続けています。

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