ニコラウス5世 (ローマ教皇)

ニコラウス5世：ルネサンス期を彩った教皇

ニコラウス5世（1397年11月15日 - 1455年3月24日）は、15世紀中期のローマ教皇であり、その在位期間は1447年から1455年までです。彼は、ルネサンス初期の教皇として、芸術と文化の振興に力を注ぎました。本名はトマソ・パレントゥチェリといい、イタリアのサルザーナ出身です。

生涯と業績

ニコラウス5世は、ボローニャで学び、その後フィレンツェで家庭教師として働きました。その中で、彼は人文主義者たちとの交流を深め、後の教皇ピウス2世となるアエネアス・シルウィウス・ピッコローミニとも親交を築きました。

教皇に就任すると、ニコラウス5世はローマの復興に尽力しました。特に、サン・ピエトロ大聖堂の修復には、人文主義者アルベルティの助言を得て行われました。また、芸術面では、フラ・アンジェリコをフィレンツェから招き、バチカン宮殿内の装飾を委ねました。そして、バチカン図書館を創設するなど、文化的な発展にも貢献しました。

教皇としての政治的な活動としては、1449年にバーゼルに残留していた公会議主義者たちを解散させ、対立[[教皇]]フェリクス5世を退位させました。また、1450年の聖年には、多くの巡礼者がローマに押し寄せ、宿泊施設不足や疫病の蔓延、サンタンジェロ橋での圧死事故など、悲惨な出来事が相次ぎました。これらの事故を受けて、橋周辺の密集した家屋が撤去され、サンタンジェロ広場が整備されました。

彼の在位中には、東ローマ帝国の首都コンスタンティノープルがオスマン帝国の攻撃によって陥落するという、歴史的な出来事も発生しました。この出来事は、ヨーロッパ社会に大きな衝撃を与え、その後の歴史に大きな影響を与えることになりました。

大航海時代と教皇勅書

ニコラウス5世は、ポルトガルの貿易権を支持するため、アフォンソ5世からの支援要請に応えました。1452年には、サラセン人などの異教徒を攻撃、征服、服従させる権利をポルトガルに認める教皇勅書を発布しました。さらに、1455年には教皇教書「ロマーヌス・ポンティフェックス」を発布し、異教徒の土地と物品をポルトガル王に独占的に所有する権利を認めました。これらの教皇勅書は、大航海時代におけるポルトガルの海外進出を後押しする重要な役割を果たしました。

歴史家のリチャード・レイズウェルは、これらの勅書が、西アフリカ沿岸で新たに発見された土地を指しており、地理的に限定されていたと指摘しています。当時のポルトガルの事業は、西アフリカの金と象牙の交易を独占していたイスラム教徒のサハラ砂漠横断キャラバンに対抗する目的もあったとされています。

後継者と影響

ニコラウス5世の教皇勅書は、後に教皇カリストゥス3世によって一部更新されました。1456年には、カリストゥス3世が教皇勅書「インテル・カエテラ」を発布し、ニコラウス5世の勅書を承認・更新しました。この勅書は、ポルトガルが西アフリカ沿岸で発見した領土に対する権利を認め、異教徒の土地をキリスト教国王領とするものでした。

また、教皇アレクサンデル6世は、1493年に教皇勅書「インテル・カエテラ」を再び発布し、勢力圏を西アフリカ沿岸からアメリカ大陸へと拡大しました。これらの教皇勅書は、その後の植民地支配の正当化に利用され、その影響は非常に大きなものとなりました。最終的には、1537年の教皇勅書「スブリミス・デウス」によって無効化されました。

ニコラウス5世の治世は、ルネサンス期における教会の役割を考える上で、重要な事例となります。彼の芸術と文化の振興は、ルネサンス文化の発展に大きな影響を与えました。また、大航海時代の幕開けにおける教皇の役割を示すものでもあり、歴史を多角的に捉える上で貴重な資料となります。

参考文献

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Lampe, Armando (2001). Christianity in the Caribbean: essays on church history. University of the West Indies Press.
Bown, Stephen R., 1494: How a Family Feud in Medieval Spain Divided the World in Half, p. 73, Macmillan, 2012
Davenport, Frances Gardiner, and Paullin, Charles Oscar. European Treaties Bearing on the History of the United States and Its Dependencies to 1684. Carnegie Institution of Washington, 1917
Housley, Norman. Religious Warfare in Europe 1400-1536, p. 187, Oxford University Press, 2002
Payne, Samuel G., A History of Spain and Portugal, Vol.1, Chapt. 10

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