ニコラス・ボバディリャ

ニコラス・ボバディリャは、16世紀のスペインに生まれたカトリック司祭、神学者であり、イエズス会創立者の一人として知られています。1507年から1511年の間にスペインのボバディリャで誕生し、1590年9月23日にロレートで生涯を閉じました。彼の人生は、信仰と学問、そして組織内での複雑な関係に彩られています。

学問とイエズス会創立

ボバディリャは、バリャドリッド大学で哲学と神学を深く学びました。その後、パリ大学在学中の1534年にイグナチオ・デ・ロヨラと出会い、その運命は大きく変わります。同年8月15日、モンマルトルの丘でロヨラ、ディエゴ・ライネス、フランシスコ・ザビエル、ピエール・ファーヴル、アルフォンソ・サルメロン、シモン・ロドリゲスと共に誓願を立て、イエズス会創立メンバーの一員となりました。この誓願は、後のイエズス会の基礎となる重要な出来事でした。

1535年、ロヨラが病気で一時的に離脱すると、ボバディリャは指導代行を務めたファーヴルのもとで学び続けました。1536年11月には修士号を取得し、パリを離れ、1537年1月にヴェネツィアでロヨラと再会を果たしました。その後、ローマへ赴き、教皇パウルス3世から祝福を授かり、ヴェネツィアに戻って1537年6月24日に司祭に叙階されました。

初期宣教活動と挫折

ヴェネツィアでの協議の結果、エルサレム巡礼が困難になったため、ボバディリャたちは北イタリア各地で宣教活動を行うことになりました。ボバディリャはザビエルと共にボローニャへ派遣され、貧民救済と布教に尽力しました。1539年には、パウルス3世の命令でガエータ、ナポリ、ビジニャーノへと派遣され、説教師として活動しました。1540年には、ポルトガル王ジョアン3世の宣教師派遣要請に応じたロヨラによって、ロドリゲスと共にインドのゴアへ派遣される予定でしたが、出発直前に重病に倒れたため、ザビエルが代わりに派遣されることになりました。ロドリゲスもジョアン3世の求めでポルトガルに留まることになり、ザビエルは単独でゴアへ向かいました。

ドイツでの活動と追放

アジアへの派遣が叶わなかったボバディリャは、その後ドイツ（神聖ローマ帝国）へ赴任しました。1546年には、スペイン王兼神聖ローマ皇帝カール5世の軍隊付牧師となり、帝国議会で宗教改革を巡る論争に参加しました。しかし、1548年のアウクスブルク仮信条協定に反対したため、カール5世によって追放され、イタリアへと戻ることになりました。

イエズス会内部での対立

イタリアに戻った後も、ボバディリャは様々な問題を引き起こしました。1556年にイエズス会初代総長ロヨラが死去した後、後継者問題で不安定だったイエズス会に対し、権限委譲を要求したり、会憲を批判する陳情書を教皇パウルス4世に送ったりして、組織内の混乱を助長させました。彼の主張はヘロニモ・ナダールによって反論され、教皇から裁量を委ねられたアントニオ・ギスリエーリ枢機卿（後の教皇ピウス5世）によって説得され、要求を断念しました。1558年に召集された総会でライネスが第2代総長に選出され、イエズス会の内部対立は収束に向かいました。

後年の活動と死

総長選出後は、ボバディリャは説教と霊的指導に専念しました。1590年にロレートで亡くなるまで、彼は人々の魂の救済のために尽力し続けました。彼の生涯は、イエズス会創立という重要な役割を果たした一方で、組織内部での対立や個人的な挫折も経験した複雑なものでした。

ボバディリャは、イエズス会の初期における重要な人物の一人であり、その活動は多岐にわたりました。しかし、その性格や行動は時に論争を引き起こし、組織内の対立を生むこともありました。それでも、彼の信仰心と宣教への情熱は、多くの人々に影響を与え、イエズス会の歴史において重要な役割を果たしたことは間違いありません。

もう一度検索