ニッコールクラブ

ニッコールクラブとは

ニッコールクラブ（Nikkor Club）は、日本の光学機器メーカーである株式会社ニコン（旧：日本光学工業株式会社）によって設立された、写真カメラおよびレンズの愛用者のための親善組織です。ニコン製品のユーザーはもちろんのこと、ニッコールレンズを使用した様々な他社製カメラのユーザーも広く受け入れ、写真文化の普及と会員相互の交流を目的として活動しています。

設立の背景と経緯

ニッコールクラブの設立は、1951年頃に当時の社長であった長岡正男氏が、増え続けるニッコールレンズやニコンカメラの愛用者に対してどのように感謝の意を表すべきか、と相談したことが始まりでした。これに対し、写真家の三木淳氏が写真団体としての設立を提案。その際、三木氏は「会社は資金的な支援はするが、運営には口出ししない」「焦らず、しかし地道に長く活動を続ける」という二つの運営方針も提唱し、これは会社側にも受け入れられました。この独立した運営方針が、クラブのその後の活動の基盤となりました。

クラブの名称が「ニコンクラブ」ではなく「ニッコールクラブ」とされたのには明確な理由があります。設立当時、日本光学工業はニコンブランドのカメラだけでなく、ライカマウント、コンタックスマウント、エクサクタマウントといった他社製カメラ用の交換レンズや、アイレス写真機製作所のアイレスフレックス、ベル＆ハウエルのシネカメラ「アイモ」、さらには大判カメラ用のレンズなど、多種多様なニッコールレンズを他社へ供給していました。もし名称を「ニコンクラブ」とすれば、これらの他社カメラでニッコールレンズを使用している多数のユーザーを対象から外してしまうことになります。実際、一時的にはアイレスフレックスのユーザーが会員数の首位を占めていた時期もあったほどです。また、日本光学工業の名前が広く世に知られるようになったのは、ニコンカメラよりもニッコールレンズが先行していたという事実も、この名称が選ばれた一因とされています。ゼンザブロニカ、マーシャルプレス、プラウベルマキナなどのユーザーも、ニッコールレンズ使用を理由に入会が可能でした。

設立と最初の活動

ニッコールクラブは、1952年9月1日に正式に設立されました。発起人には、当時の日本光学工業社長・長岡正男氏を中心に、写真界から木村伊兵衛、土門拳、三木淳氏といった著名な写真家、さらにはデザイナーの亀倉雄策氏、俳優の高峰秀子氏、そして海外からはデビッド・ダグラス・ダンカン氏やマーガレット・バーク＝ホワイト氏といった世界的に著名な写真家など、多彩な顔ぶれが名を連ねました。発足時の会員数は971名でした。設立当日は、東京の豊島園で有馬稲子氏や岡田茉莉子氏をモデルとした記念すべき第一回撮影会が開催され、クラブ活動の幕が切って落とされました。

会員数と歴代会長

ニッコールクラブの会員数は順調に増加し、1983年10月31日時点では157,469人に達しました。これは、写真愛好家の間でニコン製品とニッコールレンズがいかに広く支持されていたかを示すものです。

クラブの会長職には、設立者である長岡正男氏が初代として就任して以来、日本の写真界を代表する錚々たる顔ぶれが名を連ねています。

歴代会長：

初代：長岡正男
二代目：木村伊兵衛
三代目：三木淳（1974年5月に木村伊兵衛氏死去に伴い就任）
四代目：佐藤明
五代目：江成常夫
六代目：西岡隆男
七代目：五代厚司
八代目：北端秀行
九代目：上村公人

組織体制の変更とアドバイザー

クラブの運営体制は時代と共に変化しています。かつては会長、顧問、事務局による合議制で運営されていましたが、2021年4月以降、体制が変更されました。運営の中核は会長、副会長、事務局の合議制となり、「顧問」の役割は「アドバイザー」へと名称が変更されました。新しい体制において、アドバイザーはクラブの運営に関する合議からは離れ、従来からの役割であったセミナー講師、フォトコンテストの審査、支部での作品批評といった各種活動において専門的な協力を行う立場となりました。なお、副会長には株式会社ニコンイメージングジャパンの役職者2名が就任しています。

2021年4月以降のニッコールクラブ アドバイザーには、秋山華子氏、上田晃司氏、熊切大輔氏、小林紀晴氏、佐藤倫子氏、三好和義氏（いずれも写真家）が就任しています。また、シニア・アドバイザーとして大西みつぐ氏、ハナブサ・リュウ氏（いずれも写真家）が名を連ねています。

ニッコールクラブは、写真愛好家のための活動を長きにわたって継続しており、ニコンサロンでの写真展開催や三木淳賞の選考協力など、日本の写真文化振興に貢献しています。

関連事項：ニコンサロン、三木淳賞

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