ニューオーリンズ・マルディグラ

ニューオーリンズ・マルディグラとは

ニューオーリンズ・マルディグラは、ルイジアナ州ニューオーリンズで毎年開催される、世界で最も有名な謝肉祭（カーニバル）の一つです。リオのカーニバルなどと並び、その華やかさと熱狂は世界中の人々を魅了します。この祭りは、カトリック教会の年中行事に深く根ざしており、キリスト教の暦における重要な時期である四旬節と密接な関係があります。

祭りの期間と概要

マルディグラの祭りは、クリスマスから数えて12日目にあたる公現祭（1月6日）から始まり、四旬節の前日である「太った火曜日」（Mardi Gras）に終了します。四旬節は、キリスト教徒が肉食を断ち、祝宴などの快楽を自粛する期間であるため、その直前まで盛大なカーニバルが催されます。

マルディグラの期間中は、毎日のようにパレード、舞踏会、キングケーキパーティーなど様々なイベントが行われます。ニューオーリンズの人々にとって「マルディグラ」とは、カーニバル期間の最終日である「太った火曜日」を指すことが多いですが、観光客にとってはカーニバル期間全体を指すことが一般的です。そのため、地元の人々はカーニバルの最終日を「マルディグラ・デー」と呼んで区別することもあります。

パレードの魅力

マルディグラのパレードは、カーニバルのクルー（Krewe）と呼ばれる団体によって組織されます。クルーのフロート（山車）に乗る人々は、群衆に向かってビーズの首飾り、ダブルーン（コイン）、装飾されたプラスチックカップ、おもちゃなどを投げます。パレードは主に週末に開催され、特に最終週は連日、有名なクルーによる大規模なパレードが繰り広げられます。

多くの観光客はバーボン・ストリートやフレンチ・クオーターに集中しますが、大規模なパレードは1979年からフレンチ・クオーターには進入していません。これは、通りの幅が狭く、安全上の問題があるためです。そのため、パレードは主にアップタウンとミッドシティ地域、セント・チャールズ大通りやカナル・ストリート沿いのルートで行われます。

マルディグラの歴史

マルディグラの慣習は、初期のフランス人植民者がルイジアナに持ち込んだもので、1699年に初めて記録されています。ニューオーリンズでの祭りの始まりは不明ですが、1743年にはカーニバルの舞踏会が行われていたことが記録されています。路上での仮面行列は、禁止された時期もありましたが、すぐに改正や緩和が行われました。

1857年には、ミスティック・クルー・オブ・コムスが最初のパレードを開催しました。コムスは最も古いマルディグラの団体ですが、パレードの創始者ではありません。しかし、彼らはカーニバルに近代的なセンスを持ち込み、多くの伝統を築きました。

戦争や経済的・政治的な理由、悪天候などにより、パレードが中止されることもありましたが、祭りの祝賀は常に続けられてきました。1972年には、大規模なパレードがフレンチ・クオーターを通ったのが最後となり、安全上の理由から禁止されました。1979年には、警察のストライキによりパレードがキャンセルされ、観光客が激減しましたが、祭りは続けられました。

1991年、ニューオーリンズ市議会は、人種や宗教などに基づく差別を禁止する条例を可決し、これに反対した多くのクルーがパレードを取りやめました。しかし、その後、連邦裁判所がこの条例を違憲と判断し、多くのクルーは再びパレードを行うようになりました。

現在では、多くのクルーがビジネスとして運営されており、誰でもメンバーになることができます。一方、老舗のクルーは、内輪の集まりとしてパレードや舞踏会を利用しています。

ハリケーン・カトリーナの影響

2005年のハリケーン・カトリーナの被害により、マルディグラの開催が危ぶまれましたが、多くのクルーがパレードを希望しました。結果、規模は縮小されましたが、カーニバルは開催されました。2006年のカーニバルでは、洪水被害を免れた地域を中心にパレードが行われ、多くのクルーが災害をテーマにしたフロートを製作しました。この年は、カーニバルに対する情熱が例年以上に高まりました。

マルディグラの伝統的な色

マルディグラの伝統的な色は、紫、金、緑です。これらの色は、1892年に「レックス・パレード」が「色のシンボル化」というテーマで選び、紫は正義、金は力、緑は信仰を意味するとされました。これらの色は、ルイジアナ州立大学のスクールカラーにも影響を与えたと言われています。

現代のマルディグラ

現代のマルディグラは、1月6日の「十二夜」から始まります。多くの老舗グループは仮面舞踏会を開催しますが、パレードは行いません。パレードは、マルディグラ・デーの3週間前からクルー・ドュ・ヴューのパレードを皮切りに始まります。近年では、マルディグラ直前の週末には観光客が急増し、多くのパレードが同時進行で行われます。

ルンディグラとマルディグラ・デー

マルディグラの前日である月曜日は「ルンディグラ」と呼ばれ、カナル・ストリートで一日中パーティーが開催されます。夜には、プロテウスとオルフェウスのパレードが行われます。

マルディグラ・デーは、早朝からズールーのパレード、続いてレックスのパレードが行われます。多くの小さな団体もパレードに参加し、町全体が賑わいます。夜には、ソサエティ・オブ・セント・アンがフレンチ・クオーターを練り歩き、様々なグループが町を巡ります。

マルディグラの終わり

マルディグラの正式な終わりは、「謁見式」で訪れます。これは、カーニバルの王と女王が、ミスティック・クルー・オブ・コムスの王と女王に会う儀式です。深夜12時には、警察がバーボン・ストリートを巡回し、マルディグラの終わりを告げます。四旬節に入ると、多くの人々が節制を始めます。

マルディグラのその他の側面

コスチュームと仮面

マルディグラ・デーには、多くの人々がコスチュームと仮面を身につけます。この日だけは、仮面で身元を隠すことが許されます。

営利化

マルディグラは伝統的な祝日であるため、公式スポンサーや公式商品はありませんが、多くの小売店が観光客向けの商品を販売しています。例外として、2006年にはハリケーン・カトリーナの被害のため、市が企業スポンサーを募りました。

ビーズ

マルディグラでは、フロートから大量のビーズの首飾りが投げられます。かつてはガラス製でしたが、現在では安価なプラスチック製が主流です。

その他の伝統

ダブルーン: マルディグラのテーマ色で彩られた金属製のコイン。クルーの紋章やパレードのテーマが刻まれています。
フラムボー: 夜間パレードで使用されるたいまつ。かつてはフロートを照らすために使われましたが、現在は伝統的な要素として残っています。
キングケーキ: マルディグラの期間に食べられるケーキ。中には小さな人形が隠されており、見つけた人は次のケーキを買う習慣があります。
ズールー・ココナッツ: ズールー・クルーが投げる装飾されたココナッツ。かつてはクルミを投げていましたが、ココナッツに変わりました。

「大人の」マルディグラ

マルディグラでは、女性がビーズと引き換えに胸を露出する行為が見られることがありますが、これは観光客に限定されたものであり、地元の人々にとっては家族で楽しむ祭りです。