ニューポート・ジャズ・フェスティバル

ニューポート・ジャズ・フェスティバル：ジャズの歴史を刻む祭典

1954年、ロードアイランド州ニューポートで産声を上げたニューポート・ジャズ・フェスティバルは、現在も世界中のジャズ愛好家から熱い注目を集める、歴史ある音楽イベントです。その始まりは、エレインとルイス・ロリラード夫妻による小さなジャズクラブでした。夫妻は、ボストンのジャズクラブ経営者だったジョージ・ウェインをプロデューサーに迎え、フェスティバルを本格的にスタートさせます。

当初はロリラード夫妻が運営していましたが、1960年にウェインへと運営が引き継がれ、フェスティバルは新たなステージへ。その後、1984年には日本ビクターがスポンサーとなり、「JVC Jazz Festival Newport, R.I.」と改称。ニューヨークなど他都市への展開も進み、国際的なジャズ・フェスティバルへと成長を遂げました。日本でも、斑尾高原にて姉妹フェスティバル「ニューポート・ジャズ・フェスティバル・イン・斑尾」が1982年から2003年まで開催されるなど、日本との深い繋がりも持ちます。しばしば「JVCフェス」と略されることもありますが、ビクターロック祭りとは直接的な関係はありません。

伝説的演奏と歴史的事件

フェスティバルの歴史は、数々の伝説的な演奏によって彩られています。ボイス・オブ・アメリカによるラジオ放送や録音を通して、マイルス・デイヴィスの「ラウンド・ミッドナイト」や、デューク・エリントン楽団による「Diminuendo and Crescendo in Blue」といった名演は後世に伝えられ、多くのアルバムとしてリリースされました。『マイルス&モンク・アット・ニューポート』、『エリントン・アット・ニューポート』といったアルバムは、ジャズ史に残る名盤として高く評価されています。これらのアルバムには、ジョン・コルトレーンやピー・ウィー・ラッセルといった巨匠たちの演奏も収録され、当時のジャズシーンの熱気を伝えています。特に、エリントン楽団の演奏では、ポール・ゴンザルヴェスの27コーラスにわたるサックスソロが話題を呼び、観客を熱狂の渦に巻き込みました。

1957年にはエラ・フィッツジェラルド、ビリー・ホリデイ、カーメン・マクレエといった女性ジャズボーカリストたちが華麗なステージを披露し、『エラ&ビリー・アット・ニューポート』としてアルバム化されました。1958年のフェスティバルは、映画『真夏の夜のジャズ (Jazz on a Summer's Day)』としてドキュメント化され、フェスティバルの活気と魅力が余すことなく伝えられています。

しかし、フェスティバルの歴史は順風満帆ではありませんでした。1960年には、熱狂的なファンによる騒動が発生し、州兵が出動する事態に発展。マディ・ウォーターズの演奏後には、詩人のラングストン・ヒューズが即興で作詞した「Goodbye Newport Blues」が演奏されるという、歴史的瞬間に遭遇しました。この騒動は、フェスティバルの中止の危機をもたらしましたが、翌年も開催されるなど、その人気は揺るぎないものでした。1971年には、会場への入場規制に抗議したファンが柵を破る事件が発生し、フェスティバルは一時中止。開催地をニューヨークに移すなど、様々な困難を乗り越えてきました。

会場と出演者

フェスティバルの会場は、当初はロリラード夫妻の私有地「ベルコート」でしたが、現在はフォート・アダムス州立公園とニューポート・カジノを使用しています。

長年に渡り、数多くのジャズミュージシャンが出演してきました。マイルス・デイビス、デューク・エリントン、ジョン・コルトレーンといったジャズ界の巨匠たちに加え、エラ・フィッツジェラルド、ビリー・ホリデイ、ニーナ・シモンなど、数々のスターがニューポートのステージを飾りました。日本人アーティストでは、穐吉敏子、弘田三枝子、原信夫とシャープス・アンド・フラッツ、渡辺貞夫、松居慶子、曽根麻央などが出演。日本とアメリカ双方から愛されるフェスティバルであることがわかります。

ニューポート・ジャズ・フェスティバルは、ジャズの歴史を刻むとともに、時代と共に進化し続ける音楽イベントです。これからも、世界中のジャズファンを魅了し続けることでしょう。

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