ニューレイヴ

ニューレイヴとは

ニューレイヴは、2000年代後半に音楽シーンを席巻したロック音楽のスタイル、およびそのムーブメントを指す言葉です。ダンスミュージックの要素を取り入れたエレクトロニカの一種として捉えられることもあります。同時期に起こったニュー・ウェイヴリバイバルから影響を受け、2000年代後半に音楽業界で広く使われるようになりました。

ニューレイヴの誕生

2000年代初頭、ポスト・パンク・リバイバルやニュー・ウェイヴ・リバイバルが起こり、1980年代の音楽に対する再評価が進む中、特にシンセポップ系のニュー・ウェイヴバンドへの注目が高まりました。ブロック・パーティーやザ・キラーズなどのバンドが、インディーロックにダンスミュージックの要素を取り入れ、エレクトロクラッシュというアンダーグラウンドなブームと連動して、クラブシーンとロックシーンの交流が活発になりました。

このような状況下で登場したのが、クラクソンズです。彼らは自らの音楽を「ニュー・ウェイヴ」と「レイヴ」を組み合わせた造語「ニューレイヴ」と名付けました。当初はクラクソンズによるジョークとして使われていましたが、彼らが音楽シーンで頭角を現すにつれて、「ニューレイヴ」という言葉がメディアを通じて広まり、「ニュー・ウェイヴの進化形」「次世代の潮流」としてもてはやされるようになりました。同時期に類似したバンドが多数デビューしたこともあり、ニューレイヴは2007年から2008年にかけてブームとなりました。

ニューレイヴの実態

ニューレイヴは、実体のないブームだったという見方もあります。しかし、音楽シーン全体を見ると、1980年代後半のマッドチェスターや1990年代後半のビッグ・ビートのように、10年周期で「ダンスとロックの融合」が繰り返されており、その流れの中で2000年代後半のダンスとロックのクロスオーバーを表現する言葉として「ニューレイヴ」が使われたと解釈できます。

「ニューレイヴ」という言葉でひとくくりにされたものには、ダンス・パンク、ディスコ・パンク、ダンス・ロック、エレクトロクラッシュ、ニュー・ウェイヴ・リバイバル、シンセポップ、エレクトロ・ポップ、エモ、スクリーモなど、多様なジャンルやムーブメントが含まれていました。

ニューレイヴへの批判

オリジナルのレイヴと「ニューレイヴ」と呼ばれるバンドの音楽は、シンセサイザーの音色がかろうじて共通している程度で、関連性は薄いものでした。また、一部のメディアは、同時期に登場したというだけで、エレクトロニック系の音楽を「ニューレイヴ」として扱っていました。例えば、ブラジルのCSSやオーストラリアのペンデュラム、ジャスティスやボーイズ・ノイズといったDJスタイルのミュージシャンも、ニューレイヴ・バンドとして扱われることがありました。

オリジナルのレイヴを代表するプロディジーは、ニューレイヴについて「メディアが仕掛けたブームであり、レイヴ・カルチャーとは無関係」と批判し、1980年代末から1990年代にかけてのサブカルチャーとしての背景を持つオリジナル・レイヴとは異なり、ニューレイヴはミュージシャンを支える土壌がないと指摘しました。しかし、クラクソンズについては「本物の才能があり、素晴らしいレコードを作ったのに、メディアに利用された」と評価しています。

クラクソンズ自身も、ニューレイヴはジャンルとは関係がないと公言し、「手に負えなくなった冗談」として決別を宣言しました。

結局、ニューレイヴはメディアによって作られたバブル的なものであり、1990年代に日本の音楽雑誌で流行した「デジタルロック」と同様の流行語と見ることができます。ニューレイヴは、広義には「2000年代に世界各地で起こった複数のエレクトロニック・ミュージックとロックのクロスオーバーをまとめた名称」であり、狭義には「クラクソンズとその周辺の音楽的に類似したバンドを指すジャンル名」と言えるでしょう。

ジャスティスやデジタリズムといった新世代エレクトロ勢の台頭とニューレイヴ勢の交流は活発であり、2000年代後半のブリットポップ再評価と同様に、安易なムーブメントと断定することはできません。ニューレイヴは、2000年代のダンスとロックのクロスオーバー・ムーブメントとして、後年振り返られることになるでしょう。

日本では、BOOM BOOM SATELLITESなどがニューレイヴからの影響を公言していました。

ニューレイヴの音楽スタイルとファッション

ニューレイヴの音楽性は、オリジナルのレイヴで流行したマンチェスター・サウンドやアシッド・ハウスに似ていますが、ビッグ・ビートやダフト・パンクからの影響が強く、エレクトロニック・ミュージックを取り入れたインディー・ロックと考えるべきでしょう。特徴としては、DJスタイルではなくバンド・スタイルであること、サイケデリックな視覚効果を重視していること、多幸感のあるトリップ感覚をダンサブルなバンドサウンドで表現しようとしていることなどが挙げられます。

ニューレイヴのファッションは、トランス系のパーティーの影響を受け、明るい蛍光色を多用するのが特徴です。ナイロン製のマウンテンパーカーや、ナイキやアディダスなどのハイカットスニーカー、カラフルなカジュアルスポーツウェアを着用する人が多く、ケミカルライトを手首に装着したり、点滅するネオンを身につけたりします。

ニューレイヴのカテゴライズは、音楽性よりも、このカラフルなファッションによって判断されることが多いと言われています。

主なミュージシャン

クラクソンズ
サンシャイン・アンダーグラウンド
レイト・オブ・ザ・ピア
ハドーケン!
CSS
エンター・シカリ
ペンデュラム
ホット・チップ
ジャスティス
デジタリズム
BOOM BOOM SATELLITES
DOPING PANDA