ニワトコ属

ニワトコ属 (Sambucus) について

ニワトコ属は、ニワトコをはじめとする植物を含むグループで、学名を Sambucus といいます。和名では庭常属や接骨木属とも呼ばれます。クロンキスト体系ではスイカズラ科に分類されていましたが、近年のAPG植物分類体系ではレンプクソウ科に分類されています。

特徴

ニワトコ属の植物は、落葉性の小高木、低木、または多年草として知られています。茎には皮目があり、内部には太い髄があります。葉は対生し、奇数羽状複葉で、小葉の縁には鋸歯があります。花は両性で小さく、放射相称で、枝先に集散状散房花序や円錐花序を形成し、多数の花をつけます。花冠は車状に(3-)5深裂し、雄しべは(3-)5個あります。子房は半下位で3-5室に分かれています。果実は液果状の核果です。

分布

ニワトコ属は世界に約25種が知られており、その多くが北半球の温帯から熱帯にかけて分布しています。また、オーストラリア、タスマニア、南アメリカにも分布が見られます。日本では、ソクズとニワトコの2種が自生しています。

主な種

日本の種

ソクズ（クサニワトコ） Sambucus javanica Blume.
ニワトコ Sambucus sieboldiana L. var. pinnatisecta G.Y. Luo & P.H. Huang.
オオニワトコ Sambucus racemosa L. subsp. sieboldiana (Miq.) H.Hara var. major (Nakai) Murata
エゾニワトコ Sambucus racemosa L. subsp. kamtschatica (E.L.Wolf) Hultén

栽培種、外国の種

セイヨウアカミニワトコ Sambucus racemosa L. subsp. racemosa - ニワトコの基本種
アメリカニワトコ Sambucus canadensis L.
セイヨウニワトコ Sambucus nigra L.
コウライニワトコ Sambucus williamsii Hance

利用

ヨーロッパでは、果実が赤いセイヨウアカミニワトコや、果実が黒いアメリカニワトコ、セイヨウニワトコなどが利用されています。これらの果実は、果実酒やジャムに加工されたり、花序は解熱や鎮痛の薬として用いられたりします。花序と砂糖、柑橘類を煮詰めて作るコーディアルは、エルダーフラワーコーディアルとして知られ、水で薄めて飲まれます。また、薄めずに飲めるレモネードタイプのエルダーフラワーも存在します。オーストリアやドイツでは、ホルンダーブルューテンという名称で、水や炭酸水で割って広く飲まれています。

ニワトコは窒素に富んだ土壌を好むため、古代の人間の居住区跡や、ニワトコの群生地からウサギの残骸が発見されることがあります。古代の人々は、ウサギがニワトコを日よけとして利用し、そのためにニワトコが生えている場所を好むと推測していました。

伝承

ニワトコは人々の生活と密接な関係があり、多くの伝説が生まれています。例えば、ユダがニワトコの木で首を吊ったという説や、ニワトコの木に生えるキクラゲを「ユダの耳」と呼んで恐れるという伝承があります。また、ニワトコ材で作ったゆりかごに赤ん坊を寝かせると生気を奪われる、ニワトコの枝で子供を叩くと成長が止まる、ニワトコの木で家を建てると怪奇現象に見舞われるなど、多くの不吉な風聞も存在します。

一方で、ファンタジー小説「ハリー・ポッターシリーズ」では、ニワトコの木が最強の杖の材料として登場しています。この杖は「死の秘宝」の一つとして物語の中で重要な役割を果たしています。

ニワトコは、その実用的な価値だけでなく、文化的な側面からも、人々の生活に深く根付いている植物と言えるでしょう。

参考文献

アリス・M・コーツ「花の西洋史事典」（八坂書房）
佐竹義輔他編『日本の野生植物 木本Ⅱ』（1989年）平凡社
茂木透、城川四郎他『樹に咲く花（合弁花･単子葉･裸子植物） 山溪ハンディ図鑑5』（2001年）山と溪谷社
米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」（YList）

外部リンク

ウィキメディア・コモンズには、ニワトコ属に関するメディアがあります。
ウィキスピーシーズには、ニワトコ属に関する情報があります。
アメリカンエルダーフラワー、アメリカンエルダー、エルダー、アメリカニワトコ - 素材情報データベース＜有効性情報＞（国立健康・栄養研究所）
エルダーフラワー、ヨーロピアンエルダー、エルダー、セイヨウニワトコ - 同
* エルダーベリー（ヨーロピアンエルダー（セイヨウニワトコ）、アメリカンエルダー（アメリカニワトコ）などの果実） - 同

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