ニーキッペー

ニーキッペー（古希: Νικίππη, Nīkippē）は、ギリシア神話に登場する女性であり、その名前は「勝利の馬」を意味するとも解釈されます。彼女は、エーリスの王ペロプスとヒッポダメイアの間に生まれた娘の一人であり、兄弟にはピッテウス、アトレウス、テュエステース、アステュダメイア、リューシディケーなどがいます。

ニーキッペーは、ミュケーナイの王ペルセウスの息子であるステネロスと結婚しました。彼女とステネロスの間には、アルキュオネー、メドゥーサ、そしてエウリュステウスという三人の子供が生まれました。特にエウリュステウスは、後にヘーラクレースの12の功業を命じる王として知られています。

ニーキッペーにまつわる重要なエピソードとして、彼女がエウリュステウスを出産した際のエピソードが挙げられます。この逸話によれば、ヘーラーはヘーラクレースをミュケーナイの王にしたくないと考えていました。そのため、ヘーラーはアルクメーネー（ヘーラクレースの母）の出産を妨害し、ニーキッペーがわずか7ヶ月でエウリュステウスを早産するように仕向けました。この早産によって、エウリュステウスがヘーラクレースよりも先に生まれたため、彼はミュケーナイの王位を継ぐことができました。この出来事は、神々の干渉が人間の運命に大きな影響を与えるというギリシア神話の典型的なテーマを反映しています。

ニーキッペーは、ギリシア神話の中でも比較的マイナーな人物ですが、彼女の息子エウリュステウスは、ヘーラクレースの物語において重要な役割を担っています。エウリュステウスは、ヘーラクレースに数々の難題を課すことで、ヘーラクレースの武勇と英雄としての名声を高める役割を果たしました。

ニーキッペーの家系図を整理すると、以下のようになります。

ペロプス（父）
ヒッポダメイア（母）
ピッテウス（兄弟）
アトレウス（兄弟）
テュエステース（兄弟）
アステュダメイア（姉妹）
リューシディケー（姉妹）
ステネロス（夫）
アルキュオネー（娘）
メドゥーサ（娘）
エウリュステウス（息子）

ニーキッペーは、神話における女性の役割や、神々の介入によって変化する人間の運命を示す存在として捉えることができます。彼女の物語は、ギリシア神話の複雑さと、その中で生きる人々の運命の多様性を表す一例と言えるでしょう。

参考文献

アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁訳、岩波文庫（1953年）
* 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』岩波書店（1960年）

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