ヌール・ムハンマド・タラキー

ヌール・ムハンマド・タラキーの生涯

ヌール・ムハンマド・タラキーは、1917年6月15日にアフガニスタンのガズニー州で生まれました。裕福な農家の出身で、幼少期から教育を受け、ムクル市の小学校を卒業後、ボンベイで英語を学びました。その後、カーブル大学で学士号、コロンビア大学で修士号、ハーバード大学で博士号を取得しています。若くして社会運動に関わり、ジャーナリストや翻訳家としても活動しました。

初期の活動

1932年、タラキーはカンダハールの果物輸出会社に就職し、その能力を発揮してボンベイ支社の秘書に昇進しました。ボンベイではパシュトゥーン人民族主義者のハーン・アブドゥルガッファール・ハーンの側近となり、民族主義運動に触れました。1937年に帰国後は、新聞に記事を執筆したり、英文の翻訳、ソ連を賞賛する記事を発表したりするなど、ジャーナリストとしての活動を始めました。

1947年には社会運動「ビシュ・ザルミヤン（目覚める青年）」に参加し、1951年からは週刊誌「アンガル（炎）」に定期的に記事を投稿しました。1945年から1952年まで、国営銀行総裁で経済相のアブドゥル・マジド・ザボリの個人秘書を務めましたが、不穏分子とみなされて首都から追放され、バダフシャーン州に左遷されました。その後、駐米アフガニスタン大使の報道官を務め、1953年にはニューヨークで記者会見を開き、当時のアフガニスタン体制を批判しました。アメリカのマスコミは彼がイギリスに政治亡命すると報じましたが、彼は自ら帰国しました。

1955年から1958年まではアメリカの海外ミッションの通訳、1962年から1963年まで駐アフガニスタン米大使館の通訳として働き、独立の翻訳会社「ヌル（世界）」を設立しました。1963年にはソ連を初訪問し、ソ連共産党から進歩的活動家として認められました。

アフガニスタン人民民主党での活動

1965年1月1日、タラキーはアフガニスタン人民民主党の設立会議で書記長と執行委員会委員に選出されました。故郷の村から議会選挙に出馬しましたが、落選しました。1967年、人民民主党はハルク（人民）派とパルチャム（旗）派に分裂し、タラキーはハルク派を率いました。1977年に両派は再統合し、タラキーは人民民主党中央委員会書記長に再選出されました。党機関紙「ハルク」の出版責任者にもなりましたが、同紙はすぐに閉鎖されました。

1978年4月26日、ダーウード大統領の命令により逮捕されましたが、翌日の人民民主党によるクーデター「四月革命」によって解放され、革命評議会議長とアフガニスタン首相に就任しました。同年12月にはソ連を訪問し、友好及び善隣条約に署名しました。

失脚と死

1979年9月14日、タラキーは副首相のハフィーズッラー・アミーンを首相官邸に呼び出しましたが、アミーンは暗殺を恐れて官邸を脱出し、反撃を開始しました。警護員の間で銃撃戦が起き、両者は互いを非難し合いました。翌9月15日、タラキーはアミーンの支持者によって逮捕され投獄されました。9月16日、アフガニスタン人民民主党中央委員会幹部会は、タラキーを全ての党職と公職から解任しました。9月23日、新議長アミーンはタラキーが存命で治療を受けていると発表しましたが、病名は明らかにしませんでした。

10月9日、カーブルのラジオはタラキーが「重度かつ継続的な病気」のため死亡したと発表しました。しかし実際は、アミーンがタラキーを暗殺したとされています。タラキーの死後、ソ連はアミーンを警戒し、彼を排除するために軍事介入を行うこととなります。

人物

タラキーはパシュトゥーン人で、ギルザイ部族連合のタラク部族ブラン氏族の出身です。生涯独身でした。パシュトー語小説の著者であり、ソ連の教科書「マルクス・レーニン主義の基本」の翻訳者でもあります。

タラキーの生涯は、アフガニスタンの激動の時代を象徴しています。ジャーナリスト、政治活動家として活躍し、アフガニスタン民主共和国の初代指導者となりましたが、権力闘争の中で非業の死を遂げました。

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