ネットジェッツ

ネットジェッツ（NetJets）とは

ネットジェッツは、バークシャー・ハサウェイの子会社であり、ビジネスジェットのフラクショナル・オーナーシップ（共同所有）やリース、プリペイドカードによる利用サービスを提供するアメリカの企業です。1964年にエグゼクティブ・ジェット・アビエーション（Executive Jet Aviation）として設立され、ビジネスジェットのチャーターや機体管理を世界で初めて行った会社として知られています。

歴史

ネットジェッツの起源は、1964年に設立されたエグゼクティブ・ジェット・エアウェイズ（EJA）に遡ります。EJAは、ビジネスジェットのチャーターおよび機体管理を行う世界初の企業でした。設立時の取締役会には、カーチス・ルメイ空軍大将やポール・ティベッツ准将、弁護士で元パイロットのブルース・サンドラン、俳優のジェームズ・ステュアート、エンターテイナーのアーサー・ゴッドフリーといった著名人が名を連ねていました。当初は10機のリアジェット23で運航を開始し、1970年代後半には年間300万マイル以上を飛行するまでに成長しました。

1984年、EJAはリチャード・サンタリによって買収されました。サンタリは、ヘリコプターのリース事業で成功を収めており、EJAの議長兼CEOに就任すると、パイロット日誌を精査し、複数人で1機の航空機を共有するビジネスモデルを考案しました。1987年には、フラクショナル・オーナーシップを提供するネットジェッツ計画が発表されました。この時、ネットジェッツの航空機には「QS」という機体記号が付けられ、四分の一の持分を販売するというコンセプトが明確に打ち出されました。

1995年、ウォーレン・バフェットがホーカー1000の四分の一持分を購入したことがきっかけで、フラクショナル・オーナーシップの可能性に気づき、1998年にEJAとネットジェッツを買収しました。ネットジェッツはその後、ヨーロッパやロシアにも事業を拡大し、2006年にはヨーロッパ最大のビジネスジェットプロバイダーとなりました。2009年にはサンタリがCEOを辞任し、デービッド・ソコルが後任となりました。本社もニュージャージー州からオハイオ州コロンバスに移転しました。2010年には、マーキス・ジェット社を買収し、プリペイド型のマーキス・ジェットカードの提供を開始しました。2014年には、中国での航空機チャーター事業の許可を取得しました。

事業内容

ネットジェッツは主に3つのサービスを提供しています。

1. ネットジェッツ・シェア: 航空機を共同所有するフラクショナル・オーナーシップ
2. ネットジェッツ・リース: 航空機の利用時間をリースするサービス
3. マーキス・ジェットカード: 飛行時間をプリペイド購入するサービス

一般的に、年間400時間以上のフライトが必要な場合は航空機の自己所有、50〜400時間の場合はフラクショナル・オーナーシップ、25〜50時間の場合はジェットカード、25時間未満の場合はチャーターが推奨されています。

ネットジェッツ・シェア

航空機を複数人で共同所有する仕組みです。1機の年間飛行時間を800時間とし、最小持分は1/16（50時間）から、1/32（25時間）ずつ増やすことができます。持分に応じて購入コストやランニングコストを負担し、自分の専用機のように利用できます。機体の維持管理やパイロットの手配はネットジェッツが行います。

ネットジェッツ・リース

航空機の利用時間をリースするサービスです。2〜5年のリース契約を結び、契約時に4ヶ月分の預託金を支払います。毎月固定のリース料金を支払い、ランニングコストはシェアと同様です。

マーキス・ジェットカード

ビジネスジェットの飛行時間を25時間単位で前払いするプリペイドカードです。特定の機体を所有するわけではなく、機種を選んで飛行時間を購入します。フライト予約は通常、出発の10時間前までで、アメリカ本土外へのフライトは48時間前までとなります。基本サービスエリアはアメリカ本土とカナダの主要空港で、それ以外の地域へはフェリー料金が発生する場合があります。また、利用が集中するピーク期間には利用制限があります。契約外の機体も利用可能ですが、交換レートが適用されます。例えば、小型機と大型機では交換レートが異なり、大型機の方がより多くの時間が消費されます。

税金問題

ネットジェッツは、アメリカの内国歳入庁（IRS）との間で税務紛争を抱えています。IRSは、ネットジェッツのフラクショナル・オーナーシップモデルを航空運送事業の偽装とみなし、未払いの税金と罰金が合計3億6600万ドルを超えると査定しました。ネットジェッツはこれに対しIRSを訴えています。

保有機材

ネットジェッツは約700機のビジネスジェットを保有しており、世界最大規模です。小型機にはセスナサイテーション・アンコールやエンブラエルフェノム 300、中型機にはホーカー750やセスナサイテーション・ラティチュード、大型機にはダッソーファルコン2000やボンバルディアグローバル6000などが含まれます。2012年には、総額176億ドルに及ぶ大規模な発注を行いました。

グループ企業

ネットジェッツには、以下のグループ企業があります。

エグゼクティブ・ジェット・マネジメント: オンデマンドの航空チャーターサービスなどを提供。
ネットジェッツ・アビエーション: ネットジェッツ・アメリカの全保有機材を運航。
* マーキス・ジェット・パートナーズ: マーキス・ジェットカードを販売。

事故

過去には、着陸時の不具合や機体の損傷などの事故が発生しています。重大な人身事故には至っていません。

まとめ

ネットジェッツは、ビジネスジェットのフラクショナル・オーナーシップという革新的なモデルを確立し、世界中のビジネスエリートに快適な空の旅を提供しています。多様なサービスと豊富な機材ラインナップで、顧客のニーズに応えています。

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