ネーレウス (ギリシア神話の英雄)

ネーレウスとは

ネーレウス（古希: Νηλεύς）は、ギリシア神話における著名な英雄です。彼の名前は、海の老人として知られる同名の神ネーレウス（古希: Νηρεύς）と似ていますが、綴りが異なり、全く別の存在です。長母音を省略してネレウスと表記されることもあります。

生まれと幼少期

ネーレウスは、大地の揺るがす神ポセイドーンと、サルモーネウスの娘であるテューローの間に生まれました。彼はペリアースとは双子の兄弟でした。しかし、不幸にも二人は生まれてすぐに捨てられてしまいます。幸いにも通りかかった馬飼いに見つけられ、手厚く養育されて成長しました。拾われた際、ペリアースは馬の蹄によって体にアザ（ペリオン）がついてしまい、これが彼の名前の由来となったと伝えられています。一方、ネーレウスは特に体表に特徴がなかったものの、ペリアースと共に育てられました。

成長とピュロス建設

大人になった後、双子の兄弟であるペリアースとネーレウスの間には次第に対立が生じるようになります。ネーレウスはペリアースの支配を逃れるため、メッセニア地方へと移り住みました。そこで彼は、新たな都市ピュロスを建設し、その王となりました。

家族と知恵

ネーレウスは、オルコメノス王イーアソスの子アムピーオーンの娘クローリスを妻として迎えます。クローリスとの間には多くの子供が生まれ、12人の息子たち――タウロス、アステリオス、ピュラーオン、デーイマコス、エウリュビオス、エピラーオス、プラシオス、エウリュメネース、エウアゴラース、アラストール、ペリクリュメノス、ネストール――と、娘ペーローをもうけました。彼は非常に優れた人物であり、神にも劣らないほどの深い知恵を持っていたとされています。

ヘーラクレースとの確執と悲劇

ネーレウスは、偉大な英雄ヘーラクレースと対立する友人がいました。ヘーラクレースがその友人に関わる願い事をした際、ネーレウスは固い友情のためにこれを拒否しました。このことがヘーラクレースの怒りを買い、ネーレウス一家は悲劇に見舞われます。ヘーラクレースの報復により、ネストールを除く11人の息子たちは無残にも殺されてしまいました。唯一生き残ったネストールは、まだ幼く、ゲレーニアーで育てられていたためにこの惨劇を免れたのです。

最期を巡る説

息子たちを失った後のネーレウス自身の最期については、いくつかの異なる伝承があります。一つの説では、息子たちと共にヘーラクレースによって殺されたとされています。しかし、別の説によれば、ネーレウスはヘーラクレースの手にかかることなく生き延び、コリントスへと移り住み、そこで人生の幕を閉じ、葬られたとも伝えられています。どちらの説が真実であるかは定かではありません。

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