ノイジードル湖

ノイジードル湖：中央ヨーロッパのステップ湖

ノイジードル湖（ドイツ語: Neusiedler See）は、中央ヨーロッパで2番目に大きなステップ湖であり、オーストリアとハンガリーの国境に位置しています。ドイツ語ではノイジードル湖、ハンガリー語ではフェルテー湖と呼ばれ、その名称は言語によって異なります。湖の総面積は315平方キロメートルで、そのうち240平方キロメートルがオーストリア領、75平方キロメートルがハンガリー領に属しています。この湖は、過去にはハンガリー領全体に属していましたが、トリアノン条約によって現在の国境線が定められました。

地理的特徴と水位変動

湖はハンガリー小平原の窪地に位置し、南北に約36キロメートル、東西に6キロメートルから12キロメートルと細長い形状をしています。アドリア海からの平均海抜は115.45メートルで、水深は最も深い場所でも1.8メートルと非常に浅いことが特徴です。この浅い水深は、水位変動に大きく影響を与え、過去には降雨や乾燥によって湖が氾濫したり、完全に干上がったりすることがありました。

湖の地層調査によると、紀元前18000年から14000年頃の形成以来、少なくとも100回は完全に干上がったことが確認されています。近現代でも1740年から1742年、1811年から1813年、そして1866年に完全に干上がった記録が残っています。1866年の干上がりの際には、湖底が乾燥し、農地として利用されたほどでした。しかし、1871年には湖が復活し、1876年春には元の大きさに戻っています。

近年では1949年夏に部分的に干上がった記録があります。湖が干上がるたびに、周辺地域では湿度や温度の緩衝効果が失われ、塩分を含んだ風が吹き荒れるなどの環境破壊が起こりました。歴史的には湖が「湿地」と呼ばれていた時期もあり、水位が低くヨシが繁茂していたことを示唆しています。水位は現在では人工水路で調整されており、オーストリア・ハンガリー水位委員会が両国間の問題を協議しています。しかし、小規模な水位変動は今でも起こり、風の影響で水位が上下することもあります。

自然と野生生物

湖の周囲はヨシ原に覆われており、多様な野生生物が生息しています。特にシラサギ、ソリハシセイタカシギ属、チドリ、ガン、カモなどの渡り鳥にとっては重要な生息地となっています。冬には、ヨシが刈り取られます。これは生態系維持と経済的利用の両面からの必要性によるものです。夏には乾燥したヨシが燃えやすく、火災が発生することもあります。

湖の水質は、温度、風、そして湖底の堆積物から広がる塩分や泥によって決まります。周辺地域には、塩性・アルカリ性の草原や乾燥性のオーク林が広がっており、ブドウ栽培も盛んです。過去には、湖を潰してダムなどの建設を行おうとする計画もありましたが、環境保護運動によって阻止されました。

周辺の町と観光

湖の周辺には、オーストリア側にイルミッツ、ポーダースドルフ・アム・ゼー、ノイジードル・アム・ゼーなど、ハンガリー側にフェルテーラーコシュ、フェルテードなどの町や村があります。これらの地域は観光地としても人気があり、特にウィーンの人々からは「ウィーンっ子の海」として親しまれています。湖ではヨット、ウィンドサーフィン、釣りなどが楽しめますが、水位が浅いため船底が湖底に触れることもあります。

毎年夏には、湖上の特設ステージでメルビッシュ湖上音楽祭が開催され、多くの観光客が訪れます。また、メルビッシュからイルミッツへのフリースタイルの横断水泳大会も開催されています。

世界遺産登録

ノイジードル湖とその周辺地域は、2001年にユネスコの世界遺産「フェルテー湖/ノイジードル湖の文化的景観」として登録されました。この登録は、単に自然環境だけでなく、湖周辺の農業景観や歴史的な建造物を含む文化的景観が評価されたものです。この地域は、様々な文化が交流してきた場所であり、周辺のワイン産地も有名です。

世界遺産の登録基準としては、文化を代表する伝統的集落や、人と環境の関わりを示す顕著な例であることが評価されました。

まとめ

ノイジードル湖は、その歴史、地理的特徴、豊かな自然、そして周辺地域の文化的景観が複合的に評価され、世界遺産に登録された貴重な場所です。湖の浅さや水位変動といった特徴が、独特の生態系や風景を形成しており、多くの人々を魅了しています。

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