ノエーモン

ギリシア神話の世界では、ノエーモンという名前を持つ複数の人物が存在します。古代ギリシア語ではノエーモンの長母音を省略して表記されることもあります。これらのノエーモンのうち、特に以下の四人がよく知られています。

サルペードーンの配下

一人目のノエーモンは、リュキアの勇将サルペードーンに従った戦士です。トロイア戦争において、彼はサルペードーンの部隊の一員として戦場に立ちましたが、ギリシア側の英雄オデュッセウスによって討たれました。コイラノス、アラストール、クロミオス、アルカンドロス、ハリオス、プリュタニスといった同じくサルペードーン配下の者たちとともに、彼は命を落としたと伝えられています。

アンティロコスの従者

二人目のノエーモンは、ピュロス王ネストールの子である武将アンティロコスの部下でした。トロイア戦争中にパトロクロスの死を悼んで催された葬礼競技において、アンティロコスは戦車競走に参加しました。競技で得た褒美の馬を、彼はスパルタ王メネラーオスから受け取る必要がありました。このとき、アンティロコスの指示を受けて、褒美の馬を曳いて帰還する役目を担ったのが、このノエーモンでした。

プロニオスの息子

三人目のノエーモンは、イタケー島の有力者プロニオスの息子です。このノエーモンは、父オデュッセウスの消息を求めてピュロスへの旅を決意したテーレマコスに対して、大きな助けとなりました。テーレマコスが旅立つ際、彼は自身の所有する一隻の船をテーレマコスに貸し与えました。しかし、テーレマコスが旅立った後、ノエーモンは自身の用事で船が必要となりました。彼はエーリス地方で飼育していた12頭の牝馬と、その仔である幼い騾馬をイタケーに連れてくるために船を使いたかったのです。しかしテーレマコスはまだ帰島していませんでした。そこでノエーモンはオデュッセウスの館を訪れ、館を占拠していた求婚者たちの中心人物であるアンティノオスやエウリュマコスに、テーレマコスがいつ戻るのかを尋ねました。求婚者たちは、ノエーモンのこの問いによって、初めてテーレマコスが密かに旅立ったことを知り、激しく動揺しました。さらにノエーモンは、テーレマコスとともに船に乗り込むメントールの姿を目撃した際、それが人間離れした、まるで神のような存在であったかのように感じたと語りました。実際にテーレマコスに同行していたメントールの正体は、女神アテーナーが姿を変えたものでした。ノエーモンがそう感じたのは、テーレマコスが出発した翌朝、館近くでメントールらしき人物を見かけたことによる不思議な感覚でした。しかし、求婚者たちは彼の言葉を聞いても、神々がテーレマコスを味方しているとは考えず、むしろ怒りを募らせました。特にアンティノオスは「あの若造が成人する前にゼウスが始末してくれたら良いのに」とまで言い放ち、他の求婚者たちとともに、帰国するテーレマコスを待ち伏せして殺害する恐ろしい計画を立てるに至りました。このように、プロニオスの子ノエーモンは、テーレマコスの旅立ちとその後の求婚者たちの陰謀に深く関わることになった人物です。

アイネイアースの従者

四人目のノエーモンは、トロイアの指導者アイネイアースに仕えた人物です。トロイア戦争終結後、アイネイアースが新たな地を求めてイタリアへと向かった際に、彼はそれに従いました。イタリアでの建国を目指すトロイア勢は、先住民族であるトゥルヌス率いるルトゥリ族との激しい戦いに巻き込まれます。この戦いの中で、アイネイアース配下のノエーモンは、ルトゥリ族の強力な戦士トゥルヌスによって討たれました。パレリス、ギューゲス、ハリュス、ペーゲウス、アルカンドロス、ハリオス、プリュタニス、リュンケウス、アミュコス、クリュティオス、クレーテウスといった仲間たちとともに、彼は異国の地で命を落としたと記録されています。

これらのノエーモンたちは、それぞれの物語において短いながらも重要な役割を果たしており、ギリシア神話の多様なエピソードにその名を見ることができます。

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