クレーテウス

ギリシア神話に登場するクレーテウス（古希: Κρηθεύς）は、テッサリア地方に栄えた都市イオールコスの創建者としてその名を残す人物です。

クレーテウスは、風の支配者とされるアイオロスと、エナレテーとの間に生まれた多くの子の一人でした。彼の兄弟には、コリントスを創建したシーシュポス、ボイオーティア地方の王アタマース、予言者サルモーネウスなどがおり、カナケーやアルキュオネーといった姉妹もいました。彼はこの名高い系譜の中で、イオールコスという新たな中心地を築くという重要な役割を果たしました。

彼の家族に関する記述の中で特筆すべきは、妻となったテューローとの関係です。テューローは彼の兄弟であるサルモーネウスの娘にあたり、クレーテウスは彼女を養育しました。その後、二人は結ばれ、夫婦となりました。クレーテウスとテューローの間には、三人の息子が生まれました。その名を知られているのは、アイソーン、アミュターオーン、そしてペレースです。特に息子の一人であるアイソーンは、後のアルゴナウタイ物語で著名となるイアーソーンの父にあたる人物として、その系譜はさらに後世へと繋がっていきます。

クレーテウスの子とされる人物については、文献によっては異説が存在する場合もあります。テッサリア地方の新たな王となるアカストスの妻クレーテーイス（あるいはヒッポリュテーとも呼ばれる）や、レームノス島の王トアースの妻ミリューネー、そしてテーバイ攻めの七将の一人であるアドラストスの父として知られるタラオスなどが、彼の子として挙げられることがあります。これらの異なる記述は、古代の伝承が多様な形で語り継がれていたことを示唆しています。

このように、クレーテウスはアイオロスの子孫として、イオールコス創建という地域的な重要性を持つ事績を残し、テューローとの間に生まれた息子たちを通じて、後の時代の神話や物語にも関わる系譜の祖となりました。彼の物語は、古代ギリシアの神話や歴史を伝える様々な文献の中に記録されています。

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