ノーススターエンジン

ノーススターエンジン：GMのV型8気筒DOHCガソリンエンジンの歴史

ノーススターエンジンは、ゼネラルモーターズ（GM）が開発したV型8気筒DOHCガソリンエンジンです。オールアルミニウムエンジンと謳われていますが、シリンダーには耐久性を高めるための鋳鉄ライナーが採用されています。これは、同時期に開発されたBMWやJaguarのV8エンジンがニカシルコーティングを採用していた点と対照的です。

エンジンの特徴

ノーススターエンジンはいくつかの特筆すべき特徴を持っています。まず、セルモーターは吸気マニフォールドの下、左右バンク間に配置されており、外部からの影響を受けにくい構造となっています。

さらに、冷却水の完全喪失時でもエンジンの動作を継続できる「キャメルモード」を搭載しています。このモードでは、シリンダーを交互に休止させることで、動作中のシリンダーとエンジン全体を空冷し、オーバーヒートを防ぎながら低出力での走行を可能にします。

ノーススターという名称は、エンジン、トランスミッション、サスペンション、ブレーキシステム、車載コンピューターを統合制御し、車両の安全性を高める「ノーススターシステム」の一部として名付けられました。

搭載車種と歴史

ノーススターエンジンは、1993年型キャデラック アランテに初めて搭載されました。その後、キャデラックだけでなく、ビュイック ルサーンなどにも搭載されています。現在までに、大きく3世代のモデルが存在します。

第1世代 (1993年-1999年)

オリジナルのノーススターエンジンは、横置き、前輪駆動用の4.6リッターエンジンです。8個の燃料インジェクタとディストリビュータレス点火システムを採用し、1995年から1997年にかけては『Ward's 10 best engines』にも選出されるなど高い評価を得ました。初期モデルは最高出力がやや抑えられていたことが知られています。1996年からは、GM全体の冷却水変更に伴い、デキシクール(DexCool)の使用が指定されましたが、エンジン自体の冷却系に変更があったわけではありません。また、当時のアルミブロック製造工程上の問題から、冷却システムの漏れ止め剤の使用が推奨されていました。

第2世代 (2000年-2003年)

第2世代では、バルブ周りの構造とヘッドボルトのサイズが変更されました。これは、バルブ機構の耐久性向上とヘッドガスケット抜けの防止を目的としています。また、点火コイルがスパークプラグ直上に配置され、スパークプラグワイヤが廃止されました。

カム形状の違いにより、トルク重視のLD8（VINコードにYが含まれる）と馬力重視のL37（VINコードに9が含まれる）の2種類が存在しました。エンジンタイプによって、トランスミッションのファイナル比やトルクコンバータクラッチが異なっていました。

第3世代 (2004年-)

第3世代のエンジンはLH2と呼ばれ、四輪駆動と後輪駆動モデル用の縦置きエンジンとして開発されました。可変バルブ機構の追加により、前世代よりも出力が向上しています。さらに、スーパーチャージャーを搭載した4.4リッターモデル（LC3）も存在します。

まとめ

ノーススターエンジンは、その革新的な技術と信頼性から、GMの高級車に長年搭載されてきた名機です。キャメルモードなど、独自の技術も搭載され、様々な状況下での走行を可能にしています。3世代にわたる改良の歴史も、エンジンの完成度の高さを示しています。

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