ハインリヒ2世 (バイエルン公)

ハインリヒ2世：バイエルンを揺るがした「喧嘩公」の生涯

ハインリヒ2世 (951年 - 995年) は、10世紀後半から10世紀末にかけて活躍したバイエルンとケルンテンの支配者であり、その激動の人生は「喧嘩公 (der Zänker)」という異名に象徴されています。彼はバイエルン大公ハインリヒ1世と、アルヌルフ公の娘ユーディトとの間に生まれました。神聖ローマ皇帝オットー2世とは従兄の関係にあたり、後の神聖ローマ皇帝ハインリヒ2世の父でもあります。

4歳で父の後を継いでバイエルン大公位に就いたハインリヒ2世は、若くして権力闘争の渦中に身を投じることになります。973年、オットー1世の死後、皇帝位を継承したオットー2世は、ハインリヒ2世を政治の中枢に据えようとしました。しかし、この協力関係は長くは続きませんでした。ハインリヒ2世の義兄にあたるシュヴァーベン大公ブルヒャルト3世の死後、オットー2世がシュヴァーベン大公位にオットーを任命したことに対し、ハインリヒ2世は反感を抱き、反乱を起こします。さらに、ノルトガウの領有を巡り、バーベンベルク家と激しい対立を繰り広げました。

この反乱は、ハインリヒ2世の逮捕と幽閉という結果に終わります。インゲルハイムでの投獄生活の後、脱出したハインリヒ2世はバイエルンに戻りますが、オットー2世のレーゲンスブルク包囲によって再び窮地に陥ります。ボヘミア公ボレスラフ2世の庇護のもとに逃れたハインリヒ2世は、バイエルン大公位を剥奪され、オットー2世の甥であるオットーがその座を継承しました。バイエルン東部とケルンテンはそれぞれ、バーベンベルク家とルイトポルト家に分割され、新たな支配体制が敷かれました。

しかし、オットー2世のボヘミア遠征における敗北を機に、ハインリヒ2世はケルンテン大公ハインリヒ、アウクスブルク司教ハインリヒとともに反乱を起こします。「三ハインリヒの反乱」と呼ばれるこの蜂起は、オットー2世の激しい反撃を招き、ハインリヒ2世らは再び逮捕され、幽閉されるという結末を迎えました。

983年、オットー2世の死によって幽閉から解放されたハインリヒ2世は、3歳で即位したオットー3世の後見人となります。しかし、翌年には自身の支持者を集め、クウェドリンブルクで国王として選出するという大胆な行動に出ました。この王位簒奪は、ザクセン大公やマインツ大司教などの強い反発を招きます。しかし、ブルグント王コンラートの娘ギーゼラと結婚していたハインリヒ2世は、テオファヌ皇太后との妥協により、バイエルン大公位を回復します。

その後、ケルンテン大公位も獲得したハインリヒ2世でしたが、995年に死去しました。彼の息子ハインリヒはバイエルン大公位を継承しますが、ケルンテン大公位はザーリアー家のオットーに返還されました。しかし、彼の息子ハインリヒは、後にオットー3世の後を継いで神聖ローマ皇帝ハインリヒ2世として君臨する事となります。ハインリヒ2世の生涯は、権力争いと反乱、そして妥協と回復という、中世ドイツの激動を象徴するものでした。彼の波乱に満ちた人生は、今もなお研究者たちの関心を集め続けています。

子女

ハインリヒ2世とブルグント王コンラートの娘ギーゼラとの間には、少なくとも3人の子供がいました。

ハインリヒ (973年 - 1024年): バイエルン大公、後の神聖ローマ皇帝ハインリヒ2世
ブルーノ: アウクスブルク司教
ギーゼラ (985年頃 - 1060/65年): ハンガリー王イシュトヴァーン1世と結婚

参考文献

瀬原義生 『ドイツ中世前期の歴史像』 文理閣、2012年
* 成瀬治 他 編 『世界歴史大系 ドイツ史 1』 山川出版社、1997年

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