ザフラー宮殿

ザフラー宮殿：後ウマイヤ朝の栄華を今に伝える壮大な宮殿跡

ザフラー宮殿（アラビア語: المدينهُ الزهراء Madīnat az-Zahrā, スペイン語: Medina Azahara ）は、スペイン・アンダルシア州コルドバの北西約7キロの丘陵地に位置する、中世イスラム建築の壮大な宮殿跡です。その名は、アラビア語で「花」を意味する「ザフラー」に由来します。

歴史的背景

この宮殿は、イベリア半島を支配した後ウマイヤ朝の時代に、アミール（首長）からカリフとなったアブド・アッラフマーン3世によって建設されました。彼は、首都コルドバの郊外に離宮都市を築き、その名を寵妃ザフラーにちなんで名付けたとされています。宮殿は、シエラ・デ・コルドバの山腹に位置し、南にはグアダルキビール川と広大な平原を見下ろす絶好のロケーションにあります。

建設が始まったのは、アブド・アッラフマーン3世がカリフを宣言した後の936年です。その工事規模は非常に大きく、毎日1万人の人夫、1000頭のラバ、400頭のラクダが動員されました。それでも足りず、民間からさらに1000頭のラバを借りる必要があったと伝えられています。建設が進むにつれて、アブド・アッラフマーン3世自身もアルカサルから移り住み、市民の移住も奨励されました。建設事業は息子のハカム2世に引き継がれ、合計35年もの歳月をかけて完成しましたが、ウマイヤ朝の内紛によりヒシャーム2世の時代に破壊されてしまいました。

その後、12世紀に地理学者イドリースィーが訪れた際には、少数の住人がいた記録が残っていますが、長らく廃墟と化していました。1910年に発掘調査が開始され、その全貌が徐々に明らかになりました。その壮大な規模から、しばしばフランスのヴェルサイユ[[宮殿]]と比較されることもあります。

宮殿の構造

ザフラー宮殿は、最上層にカリフの宮殿や宮廷人の住居、中層には庭園、下層には大モスクと一般市民の住宅地が配置されたと考えられています。宮殿は、東西1500メートル、南北700メートルという広大な敷地を誇り、正門にはドームを頂く円柱回廊があり、寵妃ザフラーを模したとされる女人像が置かれていました。宮殿には、1500枚以上の鉄や青銅を張った扉、4000本以上の大理石の円柱が使われていました。

カリフの謁見の間は、金や銀の瓦、大理石の床、アラバスターの壁、象牙と黒檀のアーチで装飾され、広間の中央には水銀をたたえた水盤がありました。これは、来訪者を驚かせ楽しませるために使われたと考えられています。また、宮殿にはコンスタンティノープルから運ばれた2つの噴水盤があり、一つは金の白鳥と人物像を持つ青銅製、もう一つは12頭の金の動物像を持つ縞瑪瑙に彫刻されたものでした。庭園には動物園があり、礼拝堂の中庭にはワインのように赤い大理石が使用されていました。また、学問を奨励したハカム2世の治世には、40万巻もの書物が運び込まれたとされています。

世界遺産としての価値

ザフラー宮殿は、その歴史的、文化的価値が認められ、ユネスコの世界遺産に登録されています。登録基準は以下の通りです。

(3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。

ザフラー宮殿は、その建築様式や規模を通して、後ウマイヤ朝の繁栄と、当時のイスラム文化の高度な技術を今に伝える貴重な遺産です。

参考文献

前嶋信次　『生活の世界歴史7　イスラムの蔭に』　河出書房新社〈河出文庫〉、1991年。

関連項目

メスキータ
アルハンブラ[[宮殿]]
メディナ・アサーラ (バンド)

外部リンク

メディナAzahara、アル·アンダルスの最初のカリフの気まぐれ
Madinat al-Zahra by art historians (英語)
Madinat al-Zahra by art historians (スペイン語)
The Shining City: Qatar Visitor
* Columbia "briefing" by Prof. Dodds

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