ハザーラ人

ハザーラ人：アフガニスタンの少数民族

ハザーラ人とは、中央アジアのアフガニスタンを中心に居住するモンゴル系の民族です。アフガニスタン国内では少数派であり、人口の約1割程度を占めるとされています。外見的な特徴としては、モンゴロイドの要素が強く見られますが、実際にはコーカソイドの血も混ざっています。

歴史的背景と迫害

アフガニスタンはイスラム教スンナ派が多数派を占めており、ハザーラ人の多くが信仰するシーア派とは宗派が異なります。この違いから、ハザーラ人は歴史的に差別や迫害を受けてきました。過去には虐殺された歴史もあり、現在でもカーブル市内では、清掃労働などの過酷な仕事を担っていることが多いのが現状です。

1978年から続くアフガニスタン紛争によって国内の治安が悪化し、生活状況も困窮しました。さらに、スンナ派系の過激派組織であるターリバーンが台頭すると、ハザーラ人に対する迫害は深刻化しました。そのため、多くのハザーラ人がシーア派国家であるイランやヨーロッパへ難民として亡命しています。

2016年時点でのイラン政府の発表によると、難民として滞在を許可されているアフガニスタン人は約95万人ですが、不法入国者を含めると250万～300万人程度のアフガニスタン人がイランに滞在していると推測されています。その中には、ハザーラ人も多く含まれていると考えられています。

近年では、2019年4月12日にパキスタン、バルチスタン州のクエッタでハザーラ人を標的とした自爆テロが発生し、多数の死傷者が出ました。このテロは、パキスタン・ターリバーン運動の一派が、シーア派を対象にテロ攻撃を繰り返しているラシュカレ・ジャングビと共同で行ったとされています。

文化とルーツ

ハザーラ人のルーツはモンゴル系民族であるとされ、言語は印欧語族ペルシャ語系のダリー語を話します。遺伝子的には、モンゴロイド系のハプログループC2 (Y染色体)が比較的高頻度に見られます。

また、ハザーラ人の居住地域には、ターリバーンによって爆破されたバーミヤンの石仏があります。2002年から2004年にかけて駐日アフガニスタン臨時代理大使を務めたモハンマド・ヌール・アクバリーも、ハザーラ人です。

ハザーラ人は、アフガニスタンの歴史と深く関わりながら、独自の文化を育んできました。しかし、紛争や迫害によって多くの人々が故郷を離れざるを得ない状況に置かれています。国際社会は、ハザーラ人に対する人道支援を継続するとともに、アフガニスタンにおける民族間の融和を促進していく必要があります。

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