ハスカー・ドゥ

ハスカー・ドゥ (Hüsker Dü)

ハスカー・ドゥは、1979年にミネソタ州セントポールで結成されたアメリカのロックバンドです。初期はハードコア・パンクバンドとして活動していましたが、後にオルタナティヴ/ポスト・ハードコアバンドとして高い評価を得ました。インディーズレーベルのSST[[レコード]]からデビュー後、1986年にメジャーレーベルのワーナー・ブラザース・レコードと契約し、解散まで活動を続けました。

1980年代のアメリカのインディーシーンにおいて、最も重要なバンドの一つとして認識されており、その音楽性は後のオルタナティヴ/インディー・ロックバンドに多大な影響を与えました。ニルヴァーナのクリス・ノヴォセリックが「ニルヴァーナの音楽はハスカー・ドゥが前にやったことの焼き直しだ」と語ったことからも、彼らの影響力の大きさが伺えます。

バンドの歴史

結成

1979年、ボブ・モールド、グレッグ・ノートン、グラント・ハート、チャーリー・パインの4人によって、Buddy and the Returnablesというバンドが結成されました。モールドとハートはラモーンズのファンであり、ノートンとパインを誘って一緒に演奏を始めましたが、パインのキーボードの音色がバンドのサウンドに合わず、次第にパイン抜きで練習するようになります。この頃からバンド名を「ハスカー・ドゥ」に変更しました。バンド名の由来は、1970年代に発売されたボードゲームで、デンマーク語/ノルウェー語で「覚えてる？」という意味を持っています。

デビュー

1980年までミネアポリスで定期的にライブを行い、中西部のオリジナル・ハードコア・パンクバンドとして知られるようになりました。ブラック・フラッグのグレッグ・ギンが彼らを気に入り、自身のレーベルであるSST[[レコード]]と契約。1982年にライブアルバム『ランド・スピード・レコード』、1983年にファーストアルバム『Everything Falls Apart』、EP『メタル・サーカス』をリリースしました。初期の頃はパンキッシュなサウンドを展開していましたが、メンバーは次第にハードコア・パンクの制約から抜け出し、より自由な音楽性を追求するようになります。

ブレイク

1984年にセカンドアルバム『ゼン・アーケード』を発表。このアルバムはコンセプトアルバムであり、LP2枚組、70分を超える大作でしたが、レコーディングに費やした時間はわずか45時間、制作費も3,200ドルという低予算で制作されました。しかし、アルバムは発売当初から高い評価を受け、パンクファン以外からも注目を集めることになります。SST[[レコード]]は当初3,500枚から5,000枚程度しかプレスしませんでしたが、発売後数週間で完売し、数ヶ月間在庫切れとなる事態が発生。これがセールスに影響し、バンドはSSTに不満を抱くようになります。1985年1月にはサードアルバム『ニュー・デイ・ライジング』、8ヶ月後の9月には4枚目のアルバム『フリップ・ユア・ウィグ』をリリースしました。

メジャーデビューと解散

『フリップ・ユア・ウィグ』のレコーディング中に、メジャーレーベルのワーナー・ブラザース・レコードから契約のオファーを受け、契約を締結。1986年3月に5枚目のアルバムであり、メジャーデビューアルバムとなる『Candy Apple Grey』をリリースしました。このアルバムはバンドにとって初のビルボードチャート入りを果たし、MTVやラジオでも取り上げられましたが、最高140位にとどまりました。1987年1月には6枚目のアルバム『Warehouse: Songs and Stories』をリリース。『ゼン・アーケード』に続く2枚組の大作でしたが、ツアー直前にバンドのマネージャーであったデヴィッド・サヴォイが自殺。ボブ・モールドがマネジメントを引き継ぐようになると、モールドとグラント・ハートの確執が表面化します。ハートはメサドン中毒に苦しんでおり、解散前のツアーにも参加して演奏できると主張していましたが、モールドはツアーを全てキャンセル。その4日後にハートがバンドを脱退し、ハスカー・ドゥは解散しました。

解散後

ボブ・モールドは解散後、シュガーを結成し、ソロのシンガーソングライターとしても活動しています。グラント・ハートもNova Mobというバンドで活動した後、ソロで活動しました。グレッグ・ノートンはGrey Areaというバンドに参加した後、音楽活動から引退し、調理師に転身。ミネソタでレストラン「The Norton」を経営しています。

2004年には、癌の治療を受けていたソウル・アサイラムのベーシスト、カール・ミュラーを支援するためのチャリティーコンサートで、モールドとハートがステージ上で共演し、ハスカー・ドゥ時代の楽曲を演奏しました。

メンバー

ボブ・モールド（Bob Mould）- ボーカル、ギター、キーボード
グレッグ・ノートン（Greg Norton） - ベース、ボーカル
グラント・ハート（Grant Hart） - ボーカル、ドラム、パーカッション、キーボード ※2017年死去

ディスコグラフィー

スタジオ・アルバム

Everything Falls Apart (1983年)
『ゼン・アーケード』 - Zen Arcade (1984年)
『ニュー・デイ・ライジング』 - New Day Rising (1985年)
『フリップ・ユア・ウィグ』 - Flip Your Wig (1985年)
Candy Apple Grey (1986年) ※全米140位
Warehouse: Songs and Stories (1987年) ※全米117位

ライブ・アルバム

『ランド・スピード・レコード』 - Land Speed Record (1982年)
The Living End (1994年)
Live Featuring J.C. (2008年)
Tonite Longhorn (2023年)

EP

『メタル・サーカス』 - Metal Circus (1983年)
Sorry Somehow (1986年)
Amusement (2013年)
『エクストラ・サーカス』 - Extra Circus (2017年)

コンピレーション・アルバム

Everything Falls Apart and More (1993年)
『サベッジ・ヤング・ドゥ』 - Savage Young Dü (2017年)

シングル

"Statues" (1981年)
"In a Free Land" (1982年)
"Eight Miles High" (1984年) ※ザ・バーズのカバー
"Celebrated Summer" (1984年)
"Makes No Sense at All" (1985年)
"Don't Want to Know If You Are Lonely" (1986年)
"Could You Be the One?" (1987年)
"She's a Woman (And Now He Is a Man)" (1987年)
"Ice Cold Ice" (1987年)

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