ハックニー・ダイアモンズ

ローリング・ストーンズ、18年ぶりのオリジナルアルバム『ハックニー・ダイアモンズ』

2023年、ローリング・ストーンズは18年ぶりとなるオリジナルスタジオアルバム『ハックニー・ダイアモンズ』をリリースしました。2005年の『ア・ビガー・バン』以来となるオリジナルアルバムは、2016年のカバーアルバム『ブルー＆ロンサム』を経ての発表となりました。

本作には、2020年に発表された新曲「リヴィング・イン・ア・ゴースト・タウン」を含む全12曲が収録されています。この曲は日本盤CDのボーナス・トラックとして追加収録されています。さらに、2021年に亡くなったチャーリー・ワッツの演奏が使用されている楽曲も存在し、往年のメンバーであるビル・ワイマンも参加しています。

ドラムスは主にスティーヴ・ジョーダンが担当しており、キース・リチャーズによると、チャーリー・ワッツは長年、自分に何かあった時の後任としてジョーダンを推薦していたそうです。

プロデュースは、ポール・マッカートニーの紹介でアンドリュー・ワットが務め、マッカートニー自身も「バイト・マイ・ヘッド・オフ」でベースとして参加しています。また、エルトン・ジョンもゲスト・ピアニストとして参加しており、その起用は、ワットによる推薦によるものです。ベースパートは、ツアーで多忙だったダリル・ジョーンズに代わり、主にキース・リチャーズ、ロン・ウッド、そしてワットが分担しました。

興味深いことに、アルバムタイトルはバンド名にちなんでいるマディ・ウォーターズの「ローリング・ストーン・ブルース」を収録していることからきています。さらに、レディー・ガガとスティーヴィー・ワンダーが「スウィート・サウンズ・オブ・ヘヴン」でゲスト参加しており、両名ともローリング・ストーンズとの正式なレコーディングでの共演は初めてとなります。

アルバムのリリースに先駆けて、イギリスの新聞『ハックニー・ガゼット』および『イズリット・ガゼット』に、架空のガラス修理会社「ハックニー・ダイアモンズ」の広告が掲載されました。広告にはバンドの過去の楽曲のタイトルが織り込まれており、この広告がアルバム発表を示唆する仕掛けとなっていました。

その後、9月4日にアルバムのリリースが発表され、10月13日には先行シングル「アングリー」がリリースされました。「アングリー」は日本では、テレビドラマ『うちの弁護士は手がかかる』の主題歌として使用され、注目を集めました。また、アルバム発売前日にはニューヨークのクラブでサプライズライブも開催され、その模様は『ハックニー・ダイアモンズ（2CDライヴ・エディション）』に収録されています。

商業的な成功も収めており、イギリスでは「アングリー」が全英シングルチャートで34位に、アルバムは全英アルバムチャートで2週連続1位を獲得しました。アメリカでもBillboard 200で初登場3位を記録するなど、世界中で高い評価を得ています。

批評家の評価は様々です。オールミュージックのStephen Thomas Erlewineは、ゲストミュージシャンの豪華さばかりが目立ち、全体的なコンセプトが弱い点を指摘しました。一方、『ガーディアン』紙のAlexis Petridisは、バンドの未来を示唆する力作と高く評価しています。PopMattersのSteve Shymanikは、『ア・ビガー・バン』よりも力強いと評価し、PitchforkのGrayson Haver Currinは、バンドの支柱を失った現状を反映した作品と評しています。

このように、賛否両論あるものの、ローリング・ストーンズの新たな一面を見せる、そして長年のファンを納得させる、非常に重要な作品となっていることは間違いありません。参加ミュージシャンも豪華で、それぞれの持ち味を存分に出した、聴き応えのあるアルバムと言えるでしょう。

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