ハトロン州

ハトロン州は、タジキスタンの南西部に位置する州で、同国を構成する3つの州の中で最も人口が多い地域です。州都はボクタールで、かつてはクルガン・テッパと呼ばれていました。州の面積は約24,800平方キロメートルです。

地理

ハトロン州は、北をギッサール山脈、南をパンジ川に囲まれ、南東はアフガニスタン、西はウズベキスタンと国境を接しています。ソビエト連邦時代には、西部のクルガン・テュベ州と東部のクリャーブ州に分かれていましたが、1992年11月に合併し、現在のハトロン州となりました。

歴史

ソ連時代、ハトロン州はソグド州と並ぶタジキスタンの二大綿花生産地でした。1930年代前半、綿花増産のために農地の集団農場化が進められ、灌漑網の拡大や強制的な移住が行われました。これにより、山岳地帯に住んでいた人々が綿花栽培地域へ、ウズベキスタンに住んでいたタジク人が低地へと強制的に移住させられました。この結果、ハトロン州ではガルミー族（旧ガルム州からの移住者）とクリャーブ族という二つのグループが形成され、互いに異なるアイデンティティを持つようになりました。この対立は、タジキスタン内戦の大きな要因となり、ハトロン州は内戦で最も大きな被害を受けた地域の一つです。

内戦の根本的な原因は解決されておらず、ハトロン州では依然として緊張が続いています。特にクリャーブ地域は、大統領の出身地であることから政治的な影響が大きく、ソ連時代からエリート層と結びつきが深く、保守的な地域とされています。一方で、州都のクルガンテッパやクリャーブの一部では、イスラム教反対派がガルミー族の間で支持を集めています。

1996年2月には、マフムード・フダイベルディエフ大佐が反乱を起こし、クリャーブ出身の議員の辞職を要求しました。政府はこれを受け入れ、首相やレニナバード州政府代表も辞任しました。この事件は、ハトロン州の政治的な不安定さを象徴する出来事でした。

行政区分

ハトロン州は24の地区に分かれており、そのうち14が西部、10が東部に属しています。

西部
バルジュヴァン地区 (Baljuvon District)
バフタール地区 (Bokhtar District)
ヴァフシュ地区 (Vakhsh District)
ヴォセ地区 (Vose' District)
ダンガラ地区 (Danghara District)
ヤヴァン地区 (Yovon District)
ルーミー地区 (Rumi District) (旧コルホーザーバード地区)
ハミダーニー地区 (Hamadoni District) (旧モスコフスキー地区)
カバディヤン地区 (Qabodiyon District)
クムサンギル地区 (Qumsangir District)
ナシリ・ヒスラウ地区 (Nosiri Khisrav District) (旧ベシュケント地区)
パンジ地区 (Panj District)
サルバンド地区 (Sarband District)
シャフルトゥズ地区 (Shahrtuz District)

東部
クリャーブ地区 (Kulob District)
ムミナバード地区 (Muminobod District)
ノラク地区 (Norak District)
ファルホール地区 (Farkhor District)
テムールマリク地区 (Temurmalik District) (旧ソヴェトスキー地区)
ホヴァリング地区 (Khovaling District)
フラサン地区 (Khuroson District) (旧ゴジマリク地区)
ズハミ地区 (Dzhami District)
ジリクル地区 (Jilikul District)
シュラーバード地区 (Shuro-obod District)

産業

ハトロン州の主要産業は農業で、特に綿花栽培とウシの放牧が盛んです。その他の産業に従事しているのは人口のわずか2～3％程度です。

住民

2008年の時点で、ハトロン州の人口は2,579,300人に達しており、2000年の2,149,500人から大幅に増加しています。

民族

クリャーブ地区では、タジク人が85％、ウズベク人が13％、その他が2％を占めています。一方、ボクタールでは、タジク人が59％、ウズベク人が32％、ロシア人が3％となっています。

ハトロン州は、歴史的な背景から民族構成が複雑であり、そのことが地域社会の安定に影響を与えていると考えられます。

言語

タジク語が広く使われていますが、ウズベク語も一部地域で使用されています。

宗教

イスラム教が主な宗教です。

関連項目

2006年タジキスタン地震は、ハトロン州にも大きな被害をもたらしました。

もう一度検索