ハドリアヌス4世 (ローマ教皇)

ハドリアヌス4世（1100年頃 - 1159年9月1日）は、第169代ローマ教皇であり、その生涯は激動の12世紀を象徴しています。彼はイングランド出身で、教皇となった唯一の人物として知られています。本名をニコラス・ブレイクスピアといい、イングランド東部のブレイクスピア農場で生まれ、セント・オールバンズの修道院学校で学びました。

生い立ちと教皇就任まで

ニコラスの父は修道士となりましたが、ニコラス自身は修道院への入所をすぐには許されませんでした。彼はパリへ渡り、その後、南仏のサン・ルフ修道院で律修司祭となります。ニコラスはそこで頭角を現し、修道院次長、そして修道院長へと昇進しました。彼の改革姿勢はローマ教皇エウゲニウス3世の目に留まり、1149年にはアルバーノの司教枢機卿に任命されました。

教皇特使としてスカンジナビアに赴任したニコラスは、ニーダロス大司教区の設置やハーマル管区の設定に尽力しました。また、オスロ大聖堂学校の設立や、ガムラ・ウプサラの管区としての承認にも貢献しました。これらの功績が認められ、1154年、ニコラスは満場一致でローマ教皇に選出され、ハドリアヌス4世として即位しました。

教皇としての試練

ハドリアヌス4世が教皇となった当時、教会は内憂外患に苦しんでいました。神聖ローマ皇帝フリードリヒ1世は教皇領への勢力拡大を狙い、南からはノルマン朝のグリエルモ1世が教皇領を脅かしていました。さらに、東ローマ帝国もイタリアへの支配を画策するなど、複雑な国際情勢に直面していました。

国内では、反教皇派の指導者アルノルド・ダ・ブレシアによる反ローマ運動が起こり、ローマの町は混乱していました。ハドリアヌス4世は、まずフリードリヒ1世と手を組み、アルノルドを追放しました。そして、ローマに対する聖務禁止処分を決定し、混乱を収めることに成功しました。

シチリアと東ローマ帝国との関係

ハドリアヌス4世は、シチリア王グリエルモ1世が教皇領の一部を占領していることを非難し、王国として認めませんでした。しかし、これに対してグリエルモ1世は教皇領南部への侵攻を開始します。東ローマ帝国との同盟を模索しますが、最終的にはシチリア王国との和平条約を結ばざるを得なくなりました。

アイルランドへの介入

1155年、ハドリアヌス4世は教皇勅書「ラウダビリテル」によってイングランド王ヘンリー2世にアイルランド侵攻を許可しました。この勅書はアイルランドの教会統治と改革を促すものでしたが、その真偽については歴史家の間で議論が続いています。

神聖ローマ皇帝との対立

ハドリアヌス4世は、皇帝フリードリヒ1世に対して強硬な姿勢で臨みました。教皇の戴冠を意味する言葉を巡って両者の間で誤解が生じ、関係は悪化しました。皇帝を破門し、軍の司令官として行動することを計画しますが、実現する前に病に倒れ、1159年に死去しました。

ハドリアヌス4世の死

ハドリアヌス4世は、皇帝フリードリヒ1世を破門する寸前で、扁桃腺炎のためにアナーニで亡くなりました。彼の死については、泉の水を飲んだ際にハエが喉に詰まったことが原因だとする逸話も残されています。彼の生涯は、司教ボソによって『教皇の書』に記録されました。

ハドリアヌス4世の教皇としての短い期間は、様々な政治的、宗教的課題に直面し、それらに立ち向かう彼の姿は、中世のヨーロッパ史において重要な位置を占めています。

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