ハナカイドウ

ハナカイドウ（花海棠）

ハナカイドウ（学名：Malus halliana）は、バラ科リンゴ属の落葉高木で、春に淡い紅色の美しい花を咲かせることで知られています。中国原産で、日本には室町時代に渡来しました。別名として、カイドウ、スイシカイドウ、ナンキンカイドウなどがあります。

名称の由来

和名のハナカイドウは、中国名の「海棠」をそのまま読んだものです。また、別名として、ナンキンカイドウ（南京海棠）、スイシカイドウ（垂絲海棠）とも呼ばれます。さらに、楊貴妃の故事から「睡れる花」とも称されることがあります。中国名は、垂絲海棠（すいしかいどう）です。

近縁種

近縁種には、ホンカイドウ（本海棠、Malus spectabilis）、ミカイドウ（実海棠、Malus micromalus）、ノカイドウ（野海棠、Malus spontanea）などがあり、これらをまとめてカイドウと呼ぶこともあります。これらのうち、ホンカイドウ、ミカイドウ、ハナカイドウは中国原産で、14世紀ごろの室町時代に日本に渡来しました。現在、一般的にカイドウとして知られているのはハナカイドウですが、ミカイドウも時折見られます。

特徴

ハナカイドウは、中国原産で、日本では北海道南西部から九州にかけて植栽されています。落葉広葉樹であり、低木から小高木に成長します。樹高は4〜8メートルに達し、幹の下部から枝分かれして乱れた樹形を形成します。樹皮は暗灰色で皮目があり、ほぼ滑らかです。一年枝は明るい褐色でつやがあり、小枝には短枝がよく発達します。

花

花期は4月頃で、短枝の先に淡紅色の花が4〜6個、垂れ下がって咲きます。花の直径は3.5〜5センチメートルで、花弁は一重または半八重で、5〜10枚あります。花柄は3〜6センチメートルと長く、八重咲きの品種も存在します。花の色は、蕾の時は紅色ですが、開花するとピンク色に変わり、徐々に薄れて白色になります。

果実

果実は直径2センチメートルで、暗赤色から黄色に熟します。秋（10月）には、リンゴに似た小さな赤い実をつけることがありますが、雄蕊が退化している花が多いため、結実することは稀です。

冬芽

冬芽は、5〜7枚の芽鱗に包まれた鱗芽で、卵形や長卵形で赤褐色をしています。枝の先には頂芽がつき、側芽は枝に沿って互生します。頂芽は側芽よりも大きく、短枝の先には花芽ができます。葉痕は半円形や三日月形で、維管束痕が3個あります。

利用

ハナカイドウは、春にサクラに似た美しい花を咲かせることから、庭木として非常に人気があります。樹高1メートル程度の幼木でも全体に花をつけるため、狭い空間にも植栽できます。特に、芽出しと同時に咲く花は優美で、庭木や生け垣に適しています。しかし、日本では関東地方以南での栽培がほとんどです。

栽培方法

栽培は、日当たりの良い、適度な湿度を保つ砂壌土が適しています。根は深く張ります。植栽適期は、2〜3月、6月下旬〜7月中旬、または3月下旬〜4月上旬、10月中旬〜11月頃です。成長は早く、剪定は11〜3月と6月中旬に行います。施肥は、2月と5月の年2回が目安です。高温や乾燥には弱いため、真夏には水やりが必要です。

その他

材は緻密で堅いため、器具材に使われることもあります。また、多花性を利用して、近縁のリンゴの受粉樹としても使われることがあります。小さな実をつけるクラブアップルは、リンゴとカイドウの雑種です。

脚注

参考文献

鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽：四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、166頁。ISBN 978-4-416-61438-9。
辻井達一『続・日本の樹木』中央公論新社〈中公新書〉、2006年2月25日、81 - 82頁。ISBN 4-12-101834-6。
正木覚『ナチュラルガーデン樹木図鑑』講談社、2012年4月26日、89頁。ISBN 978-4-06-217528-9。
山﨑誠子『植栽大図鑑［改訂版］』エクスナレッジ、2019年6月7日、168 - 169頁。ISBN 978-4-7678-2625-7。


関連項目

ノカイドウ - 日本原産の種。宮崎県・鹿児島県にわずかに分布する。
ズミ

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