ハマーの水車

ハマーの水車：歴史と技術の証

シリアの都市ハマーを流れるオロンテス川沿いには、かつて多くの水車が立ち並んでいました。これらは「ハマーの水車」（英語: Norias of Hama、アラビア語: نواعير حماة）として知られ、特に水汲み水車（ノーリア、英語: noria、アラビア語: ناعورة, nā‘ūra）群は、その壮大な姿で人々を魅了してきました。現在では、17基の木製水車が残っており、実用的な役割は終えましたが、歴史的な景観を構成する重要な要素として保存されています。これらの水車は、「これまでに構築された最も壮麗な水汲み水車」と称賛されており、1999年8月にはシリア・アラブ共和国によって世界遺産の暫定リストに登録されました。

歴史的背景

ハマーの水車の起源については、東ローマ帝国（ビザンティン帝国）時代に開発された可能性が指摘されています。しかし、現在ハマーに残る水車はいずれも、アイユーブ朝時代以降に建設されたものです。ただし、西暦469年にアパメアで発見されたモザイク画には、ハマーの水車によく似た水車が描かれており、そのルーツがさらに古い時代に遡る可能性を示唆しています。

水車の仕組みと特徴

水汲み水車は、低い場所から高い場所へ水を汲み上げるための装置です。製粉所などで使われる水車とは異なり、動力源として他の機械を動かすことはありません。ノーリアは、水車全体の高さより少し低い位置まで水を持ち上げることができます。ハマーの水車は、その中でも最大級の規模を誇り、直径約20メートルにも達するものがあります。

特に有名なのは、14世紀に建設された「アル＝モハンメディーエ」（al-Muhammadiye、al-Muhammadiyah）と呼ばれる西側の水車です。この水車は1977年に補修されており、かつてはハマーの大モスクへ水を送る役割を担っていました。

現在の役割

現在、ハマーの水車は実用的な役割を終えていますが、その歴史的な価値と景観上の重要性から、観光資源として大切にされています。かつては人々の生活を支えた水車が、今はその美しい姿で訪れる人々を魅了しています。ハマーの水車は、古代からの技術と文化が融合した、シリアの貴重な遺産の一つと言えるでしょう。

参考文献

Ring, Trudy; Berney, K.A.; Salkin, Robert M.; La Boda, Sharon; Watson, Noelle; Schellinger, Paul (1996). International Dictionary of Historic Places: Middle East and Africa. Routledge. ISBN 1-884964-03-6.
Needham, Joseph; Ronan, Colin A. (1995). The Shorter Science and Civilisation in China: Volume 5. Cambridge University Press. ISBN 0-521-46773-X.
Burns, Ross (2009) [1992]. The Monuments of Syria; A Guide (New and updated ed.). New York: I.B. Tauris. ISBN 978-1-84511-947-8.

外部リンク

Sound and video of Norias on Sound Tourism site


これらの参考文献や外部リンクは、ハマーの水車に関する更なる情報を得るのに役立つでしょう。

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