ハラール・セーヴェルー

ハラール・シグール・ヨハン・セーヴェルー（Harald Sigurd Johan Sæverud, 1897年 4月17日 - 1992年 3月27日）は、20世紀のノルウェーを代表する作曲家の一人です。指揮者としても活動し、特にベルゲン・フィルハーモニー管弦楽団の客演指揮者として自身の作品を度々演奏しました。生涯にわたり9つの交響曲をはじめ、数多くのピアノ作品を含む多様なジャンルの音楽を生み出しました。

生涯

生い立ちと初期

ノルウェー西部の主要都市ベルゲンに生まれたセーヴェルーは、地元のベルゲン・グリーグ音楽院で音楽の基礎を学びました。その後、ドイツのライプツィヒに留学し、作曲家のボルクヒルト・ホルムセンらに師事しました。この留学中に彼は大規模な《交響的幻想曲》の構想を練り始め、これが後の《交響曲第1番》へと発展しました。特に《幻想曲第1番》は1919年に完成し、翌1920年に当時のクリスチャニア（現オスロ）で上演されました。この作品で示されたずば抜けた才能は高く評価され、奨学金を得てベルリン高等音楽学校でフリードリヒ・コッホに2年間学ぶ機会を得ました。ベルリン時代には《交響曲第1番》の終楽章部分を完成させ、友人ルドヴィク・モヴィンケルの指揮のもと、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団によって初演されています。この初演に対する批評は極めて好意的であり、セーヴェルーは交響曲や管弦楽作品の創作に一層力を注ぐようになりました。

1922年に故郷ベルゲンに帰郷すると、わずかな例外を除き、以降ほぼ生涯をこの地とその近郊で過ごしました。初期の作品には後期ロマン派の影響が見られましたが、やがてハイドンやモーツァルトといった古典派の形式に触発されつつ、独自の音楽語法を確立しました。しかしながら、彼の確立した「新古典主義」は、時に不協和音や激しい感情表現を伴い、表現主義にも通じる面を持っていたことも特筆されます。

ベルゲン時代と戦争期

1930年代に米国出身のマリー・フフォスレーヴと結婚し、1939年にはベルゲン郊外に建てた大きな新居へと家族と共に移り住みました。この転居を機に自然との触れ合いが深まり、それが作品に新たな影響と霊感を与えました。彼の作風はよりノルウェー国民楽派的な色彩を帯び、「若々しい」と形容されるものへと変化していきました。

1940年、ノルウェーはナチス・ドイツの侵攻を受け、占領下に置かれます。この困難な時期、セーヴェルーの音楽は占領軍に対する抵抗の意思を示す「武器」として機能しました。この時期に生まれた代表作には、一連の「戦争交響曲」と呼ばれる作品群があります。これには《交響曲第5番「幻想曲風に」》、特に悲劇的な《交響曲第6番「哀しみの交響曲」》、そして《交響曲第7番「詩篇」》が含まれます。また、ナチス支配への直接的な抵抗を表現したピアノ独奏曲《蜂起のバラード（Kjempeviseslåtten）》も同時期に作曲され、後に管弦楽版も作られて広く知られるようになりました。

こうした力強く激しい作品とは対照的に、彼はノルウェーの美しい自然や民謡からインスピレーションを得て、数多くの抒情的なピアノ小品も創作しています。ただし、民謡そのものを直接引用することは避けていました。

戦後と晩年

第二次世界大戦後、セーヴェルーはノルウェー音楽界の重鎮としての地位を確立し、その作品は広く受け入れられるようになりました。晩年にかけての注目すべき作品には、劇作家ヘンリック・イプセンの戯曲『ペール・ギュント』のための劇付随音楽（1948年）や、《交響曲第8番「ミネソタ」》（1958年）、そして彼にとって最後の交響曲となった《交響曲第9番》（1966年）があります。このほか、バレエ音楽《青ひげ伯爵の悪夢》、ピアノ協奏曲、ヴァイオリン協奏曲、ファゴット協奏曲など、様々なジャンルの作品を生み出しました。特に晩年の20年間は室内楽への関心を深め、3曲の弦楽四重奏曲や2曲の木管五重奏曲を含む様々な室内楽曲を創作しました。

評価と栄誉

ハラール・セーヴェルーは、そのユーモラスで個性的な言動で知られる一方、自身に憂鬱な一面があることを自覚していました。彼は自らの音楽について、「恐ろしく物悲しい、ひどく物悲しいものだ」と語っています。その作品もまた非常に個性的で、例えば指揮者のジョン・バルビローリは「セーヴェルーの作品を好むかどうかに関わらず、その作曲者が誰であるかは一聴して明らかだ。このような作曲家は今日では滅多にいない」と評しています。

セーヴェルーは、ノルウェー国内だけでなく、ヨーロッパの音楽界における重要な地位を認められ、数多くの栄誉を受けました。

1955年からはノルウェー政府より芸術家年金を給付されました。
1957年にはベルゲン音楽協会「ハルモニーエン」の名誉会員に選ばれ、金メダルを授与されています。
同年、ノルウェー王室聖オーラヴ勲章の騎士となり、20年後には司令官の称号を与えられました。
1979年にはノルウェー文化委員会名誉賞を受賞しています。

また、スウェーデン、フィンランド、ユーゴスラヴィア、イギリスなど、国外からも授章しています。

セーヴェルーは1992年に94歳の生涯を閉じました。葬儀はベルゲンのグリーグ・ホールで執り行われ、その様子はノルウェー国営放送で中継されました。ベルゲンには彼に関する博物館（コーデー・ベルゲン美術館の一部）があり、その功績を今に伝えています。

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