ハリプンチャイ王国

ハリプンチャイ王国：謎に包まれたモン族の古王国

ハリプンチャイ王国（Hariphunchai）は、現在のタイ王国北部、ランプーン県を中心に栄えたモン族の国家です。タイ語では「หริภุญชัย」、パーリ語では「हरिभुंजय」と表記されます。この王国は、数多くの年代記に登場しますが、その歴史的実態は多くの謎に包まれています。

成立と初期の歴史

ハリプンチャイ王国の成立については、『ジナカーラマーリー』や『チャーマデヴィーヴァムサー』といったパーリ語で書かれた年代記に記述が見られます。これらの年代記によれば、661年にチャマデヴィーという姫が、当時のモン族国家ドヴァーラヴァティー王国が支配していたラヴォ（現在のロッブリー）からランプーンに派遣されたことが、建国のきっかけとされています。しかし、実際の建国は750年頃であると推測されています。

950年頃には、ラヴォが「野蛮人の王」によって占領され、モン族勢力の中心がハリプンチャイへと移動しました。その後、1005年から1022年頃には、ラヴォがクメール王スーリヤヴァルマン1世に占領されるなど、支配勢力が変動しました。ハリプンチャイは、ラヴォをモン族勢力下に取り戻そうと試み、クメールとの間で幾度も争いが起こりました。

クメールとの抗争

1010年、ハリプンチャイはラヴォに軍を派遣し攻撃を開始しましたが、この戦いは10年にも及びました。最終的には、マレー半島ナコーンシータンマラートのクメール人王の援軍によってハリプンチャイ軍は敗走しました。さらに、1023年にはクメール王カムボジャラージャ（一説にはスーリヤヴァルマン1世）の軍勢がランプーンを攻撃し、ハリプンチャイは大きな被害を受けました。

衰退と異民族の侵入

1050年には、ランプーンでコレラが6年間も流行し、モン族の一部が下ビルマのハンターワディー（ペグー）やタトン王国のモッタマへ移住しました。この混乱に乗じて、タイ族をはじめとする異民族の侵入が増加し、1090年頃には異民族によるクーデターも発生しました。

1130年頃には、ハリプンチャイ王アーディッタが再びラヴォへ侵攻し、一時的にラヴォをモン族勢力下に収めました。しかし、1150年にはクメール勢力がラヴォを奪還し、その後、ラヴォはハリプンチャイの影響下でクメールから離反する動きを見せ、1155年には宋に使節を送り独立国としての承認を得ました。

黄金期と滅亡

13世紀初頭まで、ランプーンを中心に寺院などの建築物が盛んに建設され、ハリプンチャイ王国は黄金期を迎えました。しかし、1281年にコレラが発生したことで弱体化し、タイ・ユワン族の王マンラーイがランプーンを攻撃し、ラーンナー王国を建国したことで、ハリプンチャイ王国は滅亡しました。その後、モン族の中心はペグーへと移りました。

ハリプンチャイ王国の歴史は、その実態が多くの謎に包まれているため、年代記や考古学的発見を通して解明が進められています。この王国の興亡は、古代東南アジアの歴史を理解する上で重要な一例と言えるでしょう。

参考文献

Ongsakul, Sarassawadee (Thai text 2001, English text 2005). History of Lan Na. trans. Chitraporn Tanratanakul. Chian Mai: Silkworm Books. ISBN 9749575849
Penth, Hans (2002). A Brief History of Lan Na - Civilizations of Nothern Thailand. Chiang Mai: Silkworm Books. ISBN 9747551322

外部リンク

* ハリプンチャイ国立博物館 - メコンプラザ内

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