ハリ・トイヴォネン

ハリ・ユハ・トイヴォネン：ラリーとサーキットを駆け抜けた人生

ハリ・ユハ・トイヴォネンは、1960年10月22日、フィンランドのヘルシンキに生まれました。彼の家族は、ラリーの世界で大きな足跡を残したことで知られています。父のパウリ・トイヴォネンと兄のヘンリ・トイヴォネンも、共に名高いラリードライバーだったのです。

ハリ自身も、父と兄の影響を受け、ラリードライバーとしての道を歩み始めました。WRCへの初参戦は1980年の1000湖ラリー。兄ヘンリが使っていたクライスラー・ダッジ・アヴェンジャーを借りての参戦でした。その後、マツダRX-7や三菱ランサーなどを駆り、WRCやフィンランド国内ラリーに参戦し経験を積みました。フィンランド・ジュニア・ラリーチームにも所属し、若手ドライバーとして成長を遂げていきます。1986年には、オースチン・ローバーワークスに移籍し、グループBカーのMGメトロ6R4でイギリスを中心に活躍しました。

しかし、同年5月2日、兄ヘンリとコドライバーのセルジオ・クレストがツール・ド・コルスで事故死するという悲劇に見舞われます。この出来事は、ハリに大きな衝撃を与えたことでしょう。その後も、ハリはラリー活動を続け、1000湖ラリーで8位というWRC自己最高位を記録しますが、RACラリーではリタイア。1986年シーズン終了前に、ラリーから引退することを決断します。

ラリー引退後、ハリはサーキットレーシングの世界へと進出しました。ツーリングカーやスポーツカーレースに参戦し、1991年から1992年にはスポーツカー世界選手権にも挑戦。ADAC主催のニュルブルクリンク1000kmでは3位という好成績を収めました。さらに、ル・マン24時間レースやアメリカン・ル・マン・シリーズといった耐久レースにも参戦し、2002年に競技生活に終止符を打ちます。F1への参戦も検討したものの、父の反対により断念せざるを得なかったという逸話も残っています。

引退後は空手の指導者として活動する一方、各地のラリーイベントに参加し、ファンとの交流を楽しんでいます。2007年にはデビッド・ブラバムが主催したチャリティーイベントレースに参加し、再びレーシングへの意欲を示唆する場面もありました。

ハリは、兄ヘンリを「ヘンカ」と呼び、その死後20年以上が経った現在も深い敬愛の念を抱き続けています。兄ほどの輝かしい実績を残すことはできませんでしたが、ハリは「ヘンリの弟」と呼ばれることに誇りを持っており、メディアやファンからの依頼にも快く応じ、生前のヘンリについて語り継いでいます。彼は、単なる「ヘンリの弟」ではなく、独自の道を歩み、モータースポーツに貢献したドライバーとして記憶されるべき人物なのです。彼の功績は、華々しい勝利の数だけでなく、兄への敬愛と、モータースポーツへの揺るぎない情熱によって彩られています。

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