ハルヲフォン・メモリアル

ハルヲフォン・メモリアル

『ハルヲフォン・メモリアル』（Haruophone Memorial）は、日本のミュージシャン近田春夫が率いたバンド、近田春夫&ハルヲフォンが、バンド解散後の1980年9月5日に発表した編集アルバムです。この作品は、彼らがキングレコード在籍中にリリースした3枚のオリジナル・スタジオ・アルバムと、グループ・サウンズ（GS）のカヴァー企画盤『リメンバー・グループ・サウンズ』から厳選された楽曲で構成されており、ハルヲフォンの活動を総覧するベスト盤的な位置づけを持っています。

アルバムの背景と構成

ハルヲフォンは1978年に解散しており、本作はその翌年に彼らの音楽的遺産をまとめる形で企画されました。選曲の対象となったのは、1976年のデビューアルバム『COME ON, LET'S GO』、1977年のセカンドアルバム『ハルヲフォン・レコード』、そして1978年のラストアルバム『電撃的東京』という3枚のオリジナル作品です。

これらに加えて、1976年11月にキングレコードの企画盤としてリリースされたオムニバス形式のGSカヴァー集『リメンバー・グループ・サウンズ』からも多数の楽曲が選ばれています。特に、『リメンバー・グループ・サウンズ』からの選曲はアルバム全体の約半数を占めており、ハルヲフォンの音楽性の中でも特に日本のポピュラー音楽、とりわけGSや歌謡曲に対する彼ら独自のアプローチが強調された内容となっています。

具体的な選曲の内訳としては、『リメンバー・グループ・サウンズ』から6曲（トラック6～11に収録）、『電撃的東京』から2曲（トラック1、4に収録）、『COME ON, LET'S GO』から2曲（トラック2、3に収録）、そして『ハルヲフォン・レコード』から1曲（トラック5に収録）が選ばれています。この構成により、単なるオリジナル曲のベスト盤にとどまらず、ハルヲフォンが得意としたカヴァー曲を含む、彼らの幅広い音楽活動を捉える作品となっています。

収録曲を見ていくと、オリジナル曲は「秘密のハイウェイ」と「ロックンロール・マイ・ウェイ」の2曲のみであり、残りは全てカヴァー曲です。アルバム収録曲である「シンデレラ」も、この編集盤においてはカヴァー曲として扱われています。山本リンダの「きりきり舞い」や森進一の「東京物語」といった歌謡曲、ジャッキー吉川とブルーコメッツの「ブルー・シャトウ」、ザ・ジャガーズの「君に会いたい」「キサナドゥーの伝説」、ザ・スパイダースの「ノー・ノー・ボーイ」、寺内タケシとバニーズの「愛のリメンバー」、ザ・モップスの「朝まで待てない」といったGSの代表曲が、ハルヲフォン流の解釈で再構築されています。これらのカヴァー曲を通じて、当時の日本の音楽シーンに対する彼らのユニークな視点やアレンジ能力が明確に示されています。

収録曲

全11曲。括弧内はオリジナルアーティストまたは収録オリジナルアルバム。

1. きりきり舞い（山本リンダ）
作詞：阿久悠、作曲：都倉俊一、編曲：近田春夫
2. シンデレラ（アルバム『COME ON, LET'S GO』）
作詞・作曲・編曲：近田春夫
3. 秘密のハイウェイ（アルバム『COME ON, LET'S GO』）
作詞・作曲・編曲：近田春夫
4. 東京物語（森進一）
作詞：阿久悠、作曲：川口真、編曲：近田春夫
5. ロックンロール・マイ・ウェイ（アルバム『ハルヲフォンレコード』）
作詞・作曲・編曲：近田春夫
6. ブルー・シャトウ（ジャッキー吉川とブルーコメッツ）
作詞：橋本淳、作曲：井上忠夫
7. 君に会いたい（ザ・ジャガーズ）
作詞・作曲：清川正一
8. キサナドゥーの伝説（ザ・ジャガーズ）
作詞：ハワード＝ブレイクリー、訳詞：なかにし礼、作曲：ハワード＝ブレイクリー
9. ノー・ノー・ボーイ（ザ・スパイダース）
作詞：田辺昭知、作曲：かまやつひろし
10. 愛のリメンバー（寺内タケシとバニーズ）
作詞・作曲：鈴木義之
11. 朝まで待てない（ザ・モップス）
作詞：阿久悠、作曲：村井邦彦

リリース形態

『ハルヲフォン・メモリアル』は、1980年9月5日にアナログレコードとして最初にリリースされました。その後、時代を経て1994年6月22日に初めてCD化され、より多くの音楽ファンがこのユニークな編集盤に触れる機会を得ました。バンドの活動期間は比較的短かったものの、このアルバムは彼らの多様な音楽性と日本のポップカルチャーへの深い理解を示す重要な作品として、後世にその名を残しています。

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