ハレ管弦楽団

ハレ管弦楽団：イギリス音楽の伝統を紡ぐ名門オーケストラ

ハレ管弦楽団（The Hallé）は、イギリスのマンチェスターに本拠を置く、国内で最も歴史のあるオーケストラの一つです。その起源は1857年、マンチェスター美術展のためにカール・ハレ（後のサー・チャールズ・ハレ）によって設立された管弦楽団に遡ります。美術展の閉幕後、常設のオーケストラとして存続することが決定され、ハレ自身の指揮のもと、1858年1月30日に最初の公演が開かれました。

黄金時代と苦難の時代

創設者ハレは、1895年に亡くなるまでオーケストラのオーナー兼常任指揮者を務め、その基礎を築き上げました。その後、ハンス・リヒターやハミルトン・ハーティといった名指揮者が音楽監督を務め、特にハーティの時代は「ハレ管の第一次黄金時代」と称されました。しかし、ハーティの退任後、楽団は低迷期を迎えます。第二次世界大戦の勃発により、楽団員が次々と徴兵され、オーケストラは存続の危機に瀕しました。

バルビローリによる再建

1943年、ジョン・バルビローリが常任指揮者に就任し、ハレ管弦楽団は新たな時代を迎えます。バルビローリは、徴兵によって33名にまで減少した楽団員を補充し、女性楽員を中心にアンサンブルを再建しました。彼の指導のもと、ハレ管弦楽団は再び輝きを取り戻し、バルビローリのオーケストラと言われるほどの関係を築き上げました。EMIに残された数々の録音、特にディーリアスの作品は、トマス・ビーチャムの演奏と並び、高い評価を得ています。

現代への継承

1970年のバルビローリの急逝後、ジェームズ・ロッホラン、スタニスワフ・スクロヴァチェフスキ、ケント・ナガノ、マーク・エルダーといった指揮者たちが楽団を率い、その伝統を受け継いできました。そして2024年からは、カーチュン・ウォンが常任指揮者として就任し、新たな時代を切り開いています。1996年には、本拠地をフリー・トレード・ホールからブリッジウォーター・ホールに移転し、より充実した環境で演奏活動を行っています。

初演作品

ハレ管弦楽団は、数々の重要な作品を初演しています。

エドワード・エルガー作曲: 交響曲第1番(1908年)
コンスタント・ランバート作曲: リオ・グランデ(1928年ラジオ初公開、1929年初公演)
アンソニー・コリンズ編曲: 戦死した兵士のための哀歌(1945年)
ウィリアム・オルウィン作曲: 交響曲第1番(1949年-1950年)
ウィリアム・オルウィン作曲: 交響曲第2番(1953年)
レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ作曲: 南極交響曲 (1953年)
ジェラルド・フィンジ: チェロ協奏曲 (1955年)
アンソニー・ミルナー作曲: オーケストラのための変奏曲(1959年)
トーマス・アデス作曲: These Premises Are Alarmed(1996年)
グスタフ・マーラー作曲: 嘆きの歌(完全版) (1997年)
グラハム・フィトキン作曲: North(1998年)
コリン・マシューズ作曲: 冥王星(2000年) - ホルスト作曲の組曲『惑星』への追加曲

歴代首席指揮者

チャールズ・ハレ (1858-1895)
フレデリック・コーウェン (1895-1899)
ハンス・リヒター (1899-1911)
ミヒャエル・バリンク (1912-1914)
トーマス・ビーチャム (1915-1920)
ハミルトン・ハーティ (1920-1934)
マルコム・サージェント (1939-1942)
ジョン・バルビローリ (1943-1970)
ジェームズ・ロッホラン (1972-1983)
スタニスワフ・スクロヴァチェフスキ (1983-1992)
ケント・ナガノ (1992-1999)
マーク・エルダー (2000-2024)
* カーチュン・ウォン（2024-）

ハレ管弦楽団は、その長い歴史の中で、常にイギリス音楽界の最前線を走り続けてきました。これからも、その伝統を受け継ぎながら、新たな音楽の創造に挑戦し続けることでしょう。

The Hallé - 公式ウェブサイト

ブリッジウォーター・ホール公式ウェブサイト

もう一度検索