南極交響曲

南極交響曲（Sinfonia antartica）

レイフ・ヴォーン・ウィリアムズが作曲した《南極交響曲》は、彼の7番目の交響曲であり、元々は映画『南極のスコット』の音楽を基に再構成された作品です。この作品は、単に《ホ短調の交響曲》と呼ばれることによる混乱を避けるため、《南極交響曲》という固有のタイトルが与えられました。そのため、《交響曲第7番「南極」》のように副題として扱うことは適切ではありません。

概要

1947年、ヴォーン・ウィリアムズはロバート・スコットの南極探検隊を描いた映画『南極のスコット』の音楽を担当しました。この映画音楽は1949年のプラハ映画祭で賞を受賞。その後、彼はこの映画音楽を再構成し、交響曲として完成させました。1949年に作曲を開始、1953年にジョン・バルビローリ指揮、ハレ管弦楽団によりマンチェスターで初演されました。

この交響曲は、通常のオーケストラ編成に加え、チェレスタ、ピアノ、パイプオルガン、様々な打楽器、ウィンドマシーン、女声合唱、ソプラノ独唱という、多彩な楽器と声楽が用いられている点が特徴的です。

楽曲構成

演奏時間は約45分。全5楽章から構成され、第3楽章と第4楽章は切れ目なく演奏されます。各楽章の冒頭には、文学作品からの引用句が掲げられています。形式にとらわれず、標題交響曲と連作交響詩の中間のような、交響組曲のような構成となっています。極地での自然の猛威、愛らしい動物たち、氷山、氷原、オーロラ、ブリザードといった情景、そして危機に直面した人間の無力感や自己犠牲の精神が、ロマン派的な構成と印象主義的な音楽語法で描かれています。

1. 前奏曲：アンダンテ・マエストーゾ（引用句：シェリーの詩『鎖を解かれたプロメテウス』）
2. スケルツォ：モデラート～ポコ・アニマンド（引用句：詩篇第104篇）
3. 風景：レント（引用句：コールリジ『シャモニー渓谷の日の出前の讃歌』）
4. 間奏曲：アンダンテ・ソステヌート（引用句：ジョン・ダン『夜明けに』）
5. 終幕：アッラ・マルチア、モデラート（ノン・トロッポ・アレグロ）（引用句：スコット大佐の最後の日記より）

楽章ごとの標題と引用句を演奏中に朗読する演出も存在しますが、作曲者の意図である第3楽章と第4楽章を続けて演奏することを妨げるため、近年では全曲演奏の前後でまとめて朗読する傾向があります。

編成

木管楽器: フルート3（ピッコロ持ち替え）、オーボエ2、イングリッシュホルン、クラリネット2、バスクラリネット、ファゴット2、コントラ[[ファゴット]]
金管楽器: ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、チューバ
打楽器: ティンパニ、打楽器奏者4名（小太鼓、大太鼓、シンバル、トライアングル、ゴング、ベル、グロッケンシュピール、ヴィブラフォン、ウィンドマシーン）
その他: チェレスタ、ハープ、ピアノ、オルガン、弦五部
* 声楽: 女声三部合唱、ソプラノ独唱（第1、第5楽章のみ）

外部リンク

南極交響曲（交響曲第7番）の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)

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